443.2008年7月30日(水) イチロー3,000本安打、WTOは決裂

 やった! マリナーズのイチロー選手が日米野球界で積み重ねたヒット数が、今日遂に大台3,000本に達した。どうあろうと素晴らしい記録であることに間違いなく、アメリカのファンも祝福し、イチロー選手の栄誉を称えている。

 イチローは並みの選手とは違って別格官幣大社の天才である。日本人野手最初のメジャーリーガーで、日本で7年連続首位打者を獲得していたが、入団前はシアトルでそれほど期待されていたわけではなかった。怪我さえなければ、2割7~8分は打てるのではないか、程度のものだった。しかし、入団1年目から大活躍で、新人王とリーグMVPを獲得してアメリカ人ファンをあっと言わせた。

 では、日米を通じて一番ヒットを打った選手は誰かというと、ピート・ローズ(元フィリーズ、レッズほか)選手で計4,256本を打った。

 文部省教員海外派遣団の添乗員として、1980年9月にフィラデルフィアを訪れたとき、自由時間内に何人かの先生とともに、当時地元のフィリーズの有名なローズ選手を観に行った。そのころのローズは、特技のヘッドスライディングをセールスポイントにして人気があった。ローズ選手が塁上に出ると、周囲のファンが「ピー、ピー、ピー・・・」と叫ぶ大歓声が耳に煩かったのが、強く印象に残っている。その後ローズ選手は脱税とか、覚せい剤とかで社会的制裁を受け、名声も地に堕ちた。晩節を汚した格好になった。イチロー選手がこんな末路を辿ることはあるまいが、「好事魔多し」と言われるように油断と傲慢が忍び寄ることがないとは言えず、好漢なお一層の自重を望むこと切なるものがある。

 さて、ジュネーブで開かれていた世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉は決裂した。前日までは何とか合意しそうな流れだったが、土壇場でインドとアメリカの対立が極度にこじれ、交渉決裂という最悪の結果になった。

 究極の目標は世界の貿易の壁を取り払い、各国が自由に制限なしに取引をしようとの理念を実現することである。しかし、地球温暖化の二酸化炭素排出削減の駆け引きでも見られる通り、どうしても先進国と発展途上国との間には、考え方において大きな落差がある。インドの代表がアメリカは自国の農業利益のために奔走しているが、インドは国内農家を守らなければいけない現状であると主張している。ある程度話がつきそうな空気だったが、そうは問屋が卸さなかった。今回のドーハ・ラウンドでは、途上国を対象にした農産物輸入急増への「特別緊急輸入制限(セーフガード)措置」が議論された。インドに中国が後押しして、アメリカを孤立させ、日米欧が受け入れを考えていたWTO事務局長の裁定案を蹴ってしまった。7年間も揉んで揉んで漸く決着と考えていた事務局長は、怒り心頭である。これからアメリカ大統領が交代することから、具体的な目標を以て会議の再開は難しく、当分途上国は高い関税をかけ、いささか世界貿易の発展にブレーキをかけることになる。日本は事務局長裁定案に、失うものが多いが世界の流れから止むを得ず同調の考えだった。農業分野ではマイナス、工業分野ではプラスのスタンスだった。これが流れ、農家は喜んでいるが、一時的なもので、世界の目は日本農業に厳しい。日本農業の復活を今後どう考えるのか。暢気な父さん、若林正俊農水相にポジティブなアイディアや秘策ありや?

 いかに超大国といえども、すさまじい勢いで発展してくる途上国を今や無視できず、かといって話がまとめられる可能性も高いわけではない。これから、世界の舞台で交渉する場合、よほどの知識、理論、哲学、交渉力がないとタフな交渉で筋を通して言い分を説得することはできないのではないか。難しい時代になったものである。

2008年7月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com