ついニコニコしてしまった。麻布十番のギャラリー東京映像で開催中の芳野満彦山岳展へ渋谷から電話してみると、芳野さんは来ておられるとのことだったので、30分後に伺うと伝えて会場へ直行した。半年振りに顔を合わせると、もう私の手紙は読まれたように机脇に置いて、いかがでしょうかと咳き込むようなお願いにすぐ大きく頷いていただいた。推薦文をお書きいただくことについて快くお引き受けいただいたのである。これでやっとほっとした。
芳野さんは赫々たる登山経歴もさることながら、山岳画家としても名を成しておられ、ご著書も「山靴の音」「われ北壁に成功せり」ほか何冊か残しておられるので、願ってもいない方に推薦文をお書きいただけることになって、実に光栄の至りである。何と言っても芳野さんは、凍傷で足の指をすべて失いながら多くの山で初登攀者となった実績は、わが国の山岳界では、伝説的な話として伝えられている。中でも日本人初のマッターホルン北壁冬季登攀者になったということは、他のアルピニストの追随を許さない。前回お会いした時に差し上げた「現代・海外武者修行のすすめ」も大変面白かったと仰っていただいた。私が山と絵画に関心を持っていることに、良い印象を抱いていただいたような気もする。A4判130枚の原稿を読みきるのにお疲れになるのではないかと心配していたが、芳野さんはご自分から本を読むのが早いと仰っていただいたので、一応1ヶ月後にこちらから電話をして様子をお聞きするということになった。偶々会場へ来られたアルパインツアーサービス㈱黒川惠社長から、同社の創立者のひとりが芳野さんだと伺って驚いた。
ともかく、これで一安心である。
北京五輪も今日からいろいろな種目で競技が始まった。しかし、日本にとってはほろ苦いスタートとなったようだ。3回連続金メダルを期待された柔道の谷亮子選手も銅メダルに終わった。競泳種目でもほとんど日本選手は予選落ちが続いている。日本記録を大幅に破っても決勝へ進めない女子400mリレーのような種目もあった。女子マラソンで連覇を期待されている野口みずき選手のように、疲労のため合宿先のヨーロッパから早めに帰国して京都の病院へ検査入院している選手もいる。日本選手の間には、どうも油断と甘さがあるのではないか。
それより驚いたのは、ロシアとグルジアとの険悪な関係がついに戦争にまで突入してしまったことだ。元々両国の関係は良くなかった。早速国連安全保障理事会では、武力行為の停止を呼びかける報道声明の取りまとめを試みたが、ロシアに対してはグルジアを支持するアメリカなどが対立して決裂した。グルジア国内には、南オセチア自治州、アブハジア自治共和国のような親ロ国家があり、EU加盟を目指すグルジアとしては、盲腸のような存在だった。
不意にロシア空軍機がグルジア国内を攻撃して多数の市民に犠牲者を出した。これから先が心配である。長崎への原爆投下記念日に、空爆をやるというのもロシア流か。