JR大船渡線に初めて乗った。一ノ関から大船渡まで約2時間。JR新幹線内のギブアウェイ「トランヴェール」8月号に、偶々2頁にわたり大船渡線(一ノ関⇔盛)が地図と写真入りで紹介されていた。それを参考に車窓から沿線風景をたっぷり楽しむことができた。
普段は地方鉄道にあまり乗る機会はないが、それでも偶に乗ると日本の原風景と縮図を見るようで、懐かしい気持ちの反面、寂しさと切ない気持ちが湧いてくる。数年前、日豊本線・城野駅から、田園地帯を飯塚方面へのんびり一人旅したとき、日本の本質を知りたいと日本へやってくる外国人旅行者には、古寺古跡を見学することはもちろん日本文化を知るうえで大切なことだが、出来れば地方都市を、列車で巡りながら訪れて見るのもいいのではないかと思った。地方の鉄道はすいているし、田舎では人や車が込み合わないので、旅行も楽に出来る。それに日本人のホスピタリティーに触れることが出来るのではないかと思った。
2輌編成のジーゼルカーだが、車窓から気がつくことが多い。北上川の水が意外に汚い。陸中松川駅前には「太陽と風の家」という公的な施設があるが、見学者がいそうもない。これも夕張化してしまうのではないかと他人事ながら気になる。沿線南側にはセメント工場が無造作に鉄骨をむき出し無気力に稼動している。2つの駅前の大きなパチンコ店が2軒も閉鎖していた。客も来なくなったのだろう。駅名も珍しい名が多い。陸中門崎(「りくちゅうかんざき」と読む)、猊鼻渓(げいびけい)、千厩(せんまや)、鹿折唐桑(ししおりからくわ)等々である。上鹿折(かみししおり)から陸前高田の区間は、山間部の小高い森林帯の中を勢いよく走ったかと思いきや、稲穂の中を疾走したり、山の中から海岸近くを走り抜ける。旅行者には飽きることのないバラエティに富んだ牧歌的な風景の連続である。
この大船渡線がドラゴンレールと言われたり、ドラゴン急行が走っているのは、路線がくねくね上がったり下がったり龍のような形をしているからだそうだ。岩手県と宮城県の県境を2度ばかりまたいで、三陸海岸へ到着する。三陸とは、陸前、陸中とは知っていたが、もうひとつの陸○は何だろうと大船渡駅までわざわざ出迎えてくれた、気仙広域連合の森正さんに尋ねてみたところ、「陸奥」と即座に答えられた。