484.2008年9月9日(火) 日本は実は核不拡散には反対なのだ。

 原子力核問題に対する考え方は、各国によってまちまちだが、そのひとつの姿を示した行動は、6日ウィーンで開かれた原子力供給国グループ(NSG)臨時総会で出された結論である。アメリカとインドの原子力協定をめぐり、核不拡散条約(NPT)未加盟のインドを例外扱いし、原子力関連の対印輸出を解禁することを全会一致で承認したのである。自国の利益に固執するアメリカの、というよりブッシュ大統領任期中の米印協定発効を目指すアメリカの主張が通り、インドが1974年の核実験を機に30年以上続いた禁輸措置は解除されることになり、NPT体制の基盤が揺らぐ懸念が出てきた。

 アメリカが主張すれば何でも道理として通る。アメリカは「インドを不拡散条約体制に取り込むことになり、NPT強化につながる」と言っているが、核問題でインドが背を向けることを恐れたアメリカが自国のビジネスを有利にするためにも、猫騙しの手を打ったとしか思えない。対印輸出を目指すNSG加盟国のアメリカ、イギリス、フランス、ロシアなどが積極的な姿勢をとるのは、それらの国々も明らかに自国の経済的利益を有利に勝ち得たいからで、インドが核不拡散条約(NPT)に未加盟なまま核開発、核兵器保有を続け、核燃料や原子炉などを輸入できるようにするのは、原子力の平和利用というNPTの理念に反する。これではパキスタンも同じような扱いを求める可能性がある。

 各国の核問題への取り組みはそれぞれ思惑があるようだが、それにも増して驚いたのは、これまで核軍縮・不拡散をテーゼとして推進してきた日本が、この期に及んで米印協定に理解を示したことである。なぜだ? 日本よ、お前もか? と聞きたい。日本国民のひとりとして、国策を国民に知らせる暇もなく寝返った理由を聞きたい。日本は原子力開発、核問題については絶対反対の立場をとっていると理解していた。これではいずれは核を拡散させる協定に関わろうとの腹があると見られても仕方があるまい。この種の協定や、条約には絶対反対の立場を取るべき筈の日本が、アメリカの言うことなら何でもお追従をしている構図があまりにも情けない。よしんば将来のビジネスチャンスだとしても、これまで世界へ向かって核廃絶を声高に叫んできたのが、日本の立場だったのではないだろうか。日本は、核ビジネスなんか考えず、核爆弾を投下したアメリカに対して、この協定には何が何でも賛成できないことを、筋を通して説得すべきなのに、唯々諾々としてアメリカに従っていることが恥ずかしい。外務省がそういう判断を下して、総会中に国民には詳細を一切伝えずアメリカに歩み寄ってアメリカに賛意を示したのは、国民に対する裏切り行為ではないのか。また日本のうそつき外交が始まった。これでは良識的な国々から信頼されなくなってしまうのではないか。

 それにしてもこんな大事なニュースをごく一部の新聞を除くと、テレビでもほとんど報道しないのは、どういうことだろうか。マス・メディアが完全に政府に丸め込まれている。真実を伝えるべきマス・メディアが責任を放棄している。面倒で地味な取材は避けるいつもながらのマス・メディアの習癖である。なぜ唯一の被爆国としての辛い立場を背に、堂々原爆投下国アメリカにここは譲れないという骨太な論理展開ができなかったのかと思うと情けない。いつもながらのノー外交官、ノー外務省、ノー外交である。

2008年9月9日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com