駒沢大学のマスコミ公開講座の2学期が始まった。昨日はペンクラブで出席できなかったので、今日が2学期最初の授業である。
いただいた小冊子「2005年衆議院選挙報道に見るマス・メディアの問題点」について、筆者である赤羽紀元講師が読み進みながら説明された。2005年衆議院選挙は郵政選挙と言われる一方で、小泉劇場とも言われて自民党が圧勝した総選挙である。赤羽講師に言わせれば、その選挙が今自民党のやっている総裁選挙と似ているそうだ。赤羽講師は、その選挙に関する大手新聞とテレビ各社の報道姿勢について解説された。内部にいた専門家であるだけに、内情に詳しくなるほどなあと謹んで聞いていた。
一旦帰宅して改めて赤坂見附の永楽倶楽部へ向かう。「知的生産の技術研究会」の定期的な小規模セミナーで、講師は教育ジャーナリストとして知られている中井浩一氏で、教育関連の著書も多数ある。テーマは「若者全体の学力は下がっているか?どうしたらいい?日本の教育」という大きなものだった。中井氏を中心に八木哲郎会長がコーディネーター役を務めながら、座談形式で話は進められていく。出席者は八木会長、久恒啓一理事長、秋田英澪子事務局長、淺川基男・早大理工学部教授、ゼミの後輩で翻訳家の遠藤靖子さん、酒のペンクラブの勝野定典さん、畑中さんと仰る女性、それに私を入れて9人。中井講師は鶏鳴学園という国語専門進学塾を主宰している。中高生と永年接しているだけに、現代の若者の気風、考え方、学力レベル等々について熟知されている。どうしたらよいかという点で、百家争鳴とまではいかないにせよ、十人十色ならぬ九人九色の建設的な意見が開陳された。
結論は学生のレベルが下がったのは、必ずしも彼らの責任ばかりではない。時代の環境が生み出した結果である。現状はレベルの低い状態を高めるのは教師の責任だということになった。久恒理事長が宮城大学と多摩大学における指導経験から、学生の学力レベル向上に自信があることを仰った。その裏づけは、宮城大学教授時代のゼミ学生に対するフィールドワークにあるとのことだった。
ただ、それはそれとして皆さんが認めていたように、やはり現代の若者が本を読まないことは事実であり、若いころからまともな読書、理論構築のための基礎学習、ディベートのような真剣な討論を経なければ、学習能力は培われないのではないかとの疑問は残る。
教育そのものとは若干離れるかも知れないが、勝野さんが建築家としての専門的な立場から欧米と日本の大学における建築の位置づけが異なるとの指摘は、頷けるものだった。欧米の大学では建築学科は美術大学に設置されているが、日本の大学では工学部の建築学科にあり、それが自ずから建築の美的観点から見るとどうしても欧米の建築物に比べて劣る理由だと言われた。
終始一貫中々骨のある面白い討論だった。