名前だけ顧問を務めているような「ふるさとテレビ」の9月セミナーで前宮城県知事・浅野史郎氏が講演されるので参加した。中々ユニークなお人柄であるが、最後の質問で次回の都知事選挙に出馬するかどうかと聞かれて、まず出ないが、もし出るとするなら石原知事が4選に出た場合だと答えられた。また、もし総選挙後に大臣に要請された場合どうするかとの問いには、受けないだろう、なぜなら前回の都知事選で現在教授を務めている慶応義塾大学に相当迷惑をかけたからだと言っていた。やっぱり少しは罪の意識があったのだなあと思った。あの時の立候補に至るシナリオは、確かに慶応に対して失礼千万だと思って、いささか憤慨していたところである。
多摩大学の公開講座では、生憎福島県の研修にぶつかり聴けなかったので、浅野氏の講演を楽しみにしていた。構想日本のパネルディスカッションにおける福島県知事当時の浅野氏は、他のパネラーを意識したのか、それほど脱線?するということはなかったが、今日は独演会とあって自由自在に自分のペースで与えられた1時間をしゃべくりまくっていた印象である。しかし、その話術は口八丁手八丁で、知事として実績は勿論、その雄弁による役所内の人心懐柔策から人気も全国的だった理由の一端を垣間見た感じだった。適宜ジョークを交えながら飽きさせず、要点をうまくまとめて中々楽しい笑いの出る雰囲気の中で「タレント・浅野史郎」をまた売り込んだ。
地方と都市の格差について浅野氏は、持論を開陳された。それぞれ自治体のスペシャルを見逃さないことが大事だ。訪れたことがない黒川温泉蘇生の例を挙げられた。制度をどうかしろとか、補助金をもらうことばかりでなく、自分たちが他所と変わったスペシャルを見出し、生かすことを考えることが大切である。
面白い話として、熊本県波野村のお神楽保存を紹介された。消えようとした伝統文化を何とか保存しようとした数少ない村人の要請を受けた、鈴木健二元NHKアナが「ふるさと伝統館館長」として、それを村人の協力の下に見事に復活させ、今では「神楽苑」でお神楽を披露して全国から大勢のファンを集めるまでになった。波野村はかつてオウム真理教が大挙押し寄せたときに、村人が結集して追い返した実績がある。山梨県上九一色村がオウムの侵入を許したのとは少し違う。波野村は相変わらず元気がいいが、上九一色村は吸収合併されてしまった。要は人である。特に、よそ者が違った目で見ることに意義がある。よそ者、変わり者、女性が惰性を変えていく。
「地方自治は民主主義の学校」というのが、今日の講演の要諦だった。
さて、相変わらず後から後から事故米の販路が公になり問題となっているが、今日農水省の太田誠一大臣と事務方トップの白須敏朗・事務次官が揃って辞めることになった。極めて異例である。大臣の如きは、先月2日大臣に就任したばかりで、残り任期もあと数日というこの期に及んでなぜ辞任したのか。責任を痛感しているというなら、もう少し泥をかぶって解決の道筋をつけてから辞めるというのが、大臣の取るべき責任ではないかと思うが、大臣の辞め方はいかにも安っぽい決断である。
浅野氏は、厚生省役人だった自分の経歴から、また大臣の厚生省役人への影響力からも直属の大臣の存在を「季節労務者」と捕らえていたとの発言には、恐れ入った。いくら何でもその程度の評価しかなされていないのか、これでは官僚を抑えるのは容易ならぬことだと思わざるを得ない。この発言が太田大臣の辞め方に象徴的に表れているように思える。