543.2008年11月7日(金) 講演のため束草(ソク・チョ)へ向かう。

 早朝起床して妻に車で羽田まで送ってもらい、予定通りソウル金浦空港に着いた。3日間ずっとお世話になる桂明洙さんに出迎えられ簡単な打ち合わせの後、地下鉄で鐘路3路に出て、国一館の韓国料理店で昼食をご馳走になる。29年ぶりの韓国の変貌に感慨に耽っていると桂さんが「韓国では10年で大きく変わります。30年経つと別世界です」と言われたが、その通りで私が知らなかった地下鉄にも多くの点で驚かされた。

 地下鉄は65歳以上の高齢者は無料だというのにまずびっくりした。実際駅員が申告者の顔を一目見ただけで疑うこともなく乗車券を発行してくれる。外国人である私にも躊躇なく切符をくれる。元鉄道員としては、車両の幅が広いのと、座席がすべてアルミ製なのが珍しかった。車内で行商人が商売をやるのにも少々驚いた。ソウル市内を縦横に走っている地下鉄ネットワークもすべて右側通行だが、1号線だけが左側通行というのには妙な感じがした。

 昼食後に桂さんが気を遣って世界遺産「宗廟」を案内してくれるという願ったり叶ったりの提案をしてくれた。今回は諦めていた世界遺産の見学であるが、桂さんの好意により拝観させていただくことになった。宗廟は市内の賑やかな一角に朝鮮風の庭園とともにある。朝鮮王朝歴代の国王と王妃の位牌を祀り、祭祀を執り行ったところで1495年に造営された。正殿に太祖をはじめとして49位を、近くの永寧殿には34位が祀ってある。朝鮮宮廷色の建物と庭園とのバランスが見事で、ちょうど紅葉の見ごろでもあり渾然一体となった造形美は、流石に世界遺産と云われるに相応しい。敷地面積があまり広くないのも私のようなショート・ビジターにとっては好都合である。これで世界遺産見学は143箇所目になる。

 この後再び地下鉄に乗り市内数箇所にあるバスセンターの中で最大のバスセンターから15:30発の高速バスで束草(ソク・チョ)へ向かう。韓国の市街地と農村を車窓からじっくり見ることができて、中々楽しいバスの旅だった。景色は日本の地方風景に似てほとんど違和感はないが、高速道路はやたらにカーブが多かったり、中央センターライン寄りにブルーのバス車線専用レーンがあったり、車線変更にもウィンカーを出さなかったり、日が暮れてくると外灯があまりなく全体に暗い感じがあったり、これもお国柄だろう。270kmの道のりを約4時間かけて束草へ到着した。聞けば、束草市は江原道の中心都市であるが、国境線38度線より北に位置していて、敢えて言えば北朝鮮領土内である。それが1952年朝鮮戦争休戦協定の際、西側の開城(ケソン)が南にあるのに北側へ編入されたのと同時に、束草が南の韓国領へ入れられたという話だった。今は一時盛んだった漁業も不漁で寂びれ、人口も8万人程度に減少してしまったという暗い話だった。

 宿泊施設は「SORAK PINE RESORT」と云われて外観は立派だが、ソフト面と内部のハード面はイマイチであまり感心できるものではない。済州島の高校生が修学旅行で宿泊していた。近くの観光地「雪岳山」を観光基地として、市当局とともども新たな発展を計画しているように見受けられた。ここの宿泊部屋はすべてオンドル形式になっていて、桂さんと同じ部屋に宿泊することになった。夕食は近所の韓国料理店で食べることになったが、すべて豆腐料理店で焼肉店がない。レストランは豆腐料理で競っていることと、値段がソウルに比べて1割方高いと桂さんは言っていた。

 夕食後明日の講演について、パワーポイントのスライドを見ながら桂さんと打ち合わせて、初めてオンドル部屋で休んだ。

2008年11月7日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com