549.2008年11月13日(木) 魅力的な中村桂子講師

 井戸敏三・兵庫県知事が関東大震災云々発言を撤回し言い訳を付して謝罪した。一方、持論に頑なに拘って主張を変えようとしないのは、自衛隊を定年退職した田母神俊雄・前航空幕僚長である。井戸知事は軽率で役人馬鹿であるから形成不利となれば、態度を変えるが、田母神氏はすでに退職し論文も自分の信念だから曲げようとしないだろう。

 さて、2週間ぶりに多摩大学講座に出席した。今日の講師は今までの講師陣とは幾分タイプが異なるJT生命誌研究館館長の中村桂子氏である。分子生物学者というタイトルをお持ちで、早大教授も歴任された方である。登壇された時と講演中の様子を見ているととても72歳には見えない。精々50歳前後にしか見えない。お名前は承知していたが、「生命誌」って一体何だろう。お仕事は何を研究しておられるのかよく分らなかったし、今でも本当のところはよく分らない。話を伺っていると人間の生命と自然界、科学との関わりと環境問題を研究している研究機関のようである。

 信念のように抱いているモットーは「人間は生き物であり自然の一部である」であると仰った。講義の核心は、人間が生きることに改めて目を向け、考え直そうと提言しているとみた。そのためには自然と人間との共生、そして人工的なものとの融合、混在に目を向けようと訴えておられた。

 パワーポイントで映写された図が簡潔に整理されていて分りやすかった。生命誌の「誌」は、「史」であることにも気づかされた。1枚の図の中に沢山の動物が描かれていたが、大小あり、昆虫が1番大きく、象が1番小さいのは生存数だという。地球上にはそれだけ虫類が多いということだ。

 中村講師は持論も披瀝された。先進国について、その定義は①一極集中していない、②食糧自給率が少なくとも80%以上である、そうである。これでは日本は完全に失格である。講師は自然の破壊を強く警戒しておられる。虫一匹が他の動物とも関係がある。ともに共生していかなければならないと仰った。日本の地勢や季節感の素晴らしさは、「源氏物語」「堤中納言物語」によく表現されていると言って話を結ばれた。

 コワモテのままマイペースでしゃべる講義ではなく、時折ジョークも交えながら終始魅力的な語り口で飽きさせなかった。中々面白い発想の話で、失礼かも知れないが話しぶりも中々チャーミングな講師だった。

2008年11月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com