6月にイギリスが国民投票でEU離脱を決めてから世界的に経済が停滞し、以降わが国でも株価が下がり続けている。国内ではもう半年も経過するというのに日銀がエイヤッとやってのけた衝撃的なマイナス金利がその効果を上げていない。そこへ昨日円高の背中を押すようについに1$=99円台にまで円高が進み、この具合では当分輸出も伸びそうにない。日銀は新たな経済対策を出すのだろうか。しばし注目して見てみたい。
その一方でアメリカ大統領選の影響を受けて対米外交でも妙なトバッチリが降りかかってきた。クリントン民主党候補の応援演説をしていたバイデン副大統領が、とんでもないことを言い出したのだ。「核保有国になり得ないとする日本の憲法をわれわれが書いたことを知らないのか。そんなことを学校で習わなかったのか」と対立候補のトランプ氏にやり返したのである。大きなお世話であるし、日本の憲法制定についてアメリカの学校で教えることはないのではないか。トランプ氏は何と言ったのか。日本の核武装を容認するから、アメリカにばかり頼らず自力で国を護れと言ったのだ。それにしてもバイデン副大統領の一方的な発言はわれわれ日本人にとって迷惑千万なことだ。大体アメリカが草案から何もかもお膳立てして日本国憲法を作成し、日本政府にこれで行けとばかり引き渡したというようなシナリオは誤解も甚だしい。バイデン氏こそもっと日本国憲法制定の事実を知ってもらいたいものである。
ワシントン・ポスト紙が報じるところによるとその前提として核保有国のアメリカは先制攻撃をしないというオバマ大統領の考えがあった。大統領が検討しているとされる核兵器の先制不使用政策に対して、安倍首相が北朝鮮に対する抑止力が弱体化し、紛争の危険が高まるとハリス太平洋軍司令官に伝えたという内々の話があった。つまり安倍首相の考えは、「先制不使用は困る。危険だと確信したらアメリカの北朝鮮へ核の先制攻撃を容認する」ということだったのである。韓国はもちろん、核保有国のイギリスやフランスもオバマ大統領が検討中の政策について反対の立場にいるそうだ。
保守派の安倍首相が反核を唱えるなら大いに歓迎だが、他国の核の使用についてまでコメントを述べることは出過ぎた発言だと思う。わが国は長年非核三原則を堅持し、核の使用に反対してきたのではなかったか。オバマ大統領の考える先制不使用政策は日本の非核三原則に触れるものではなく、非核三原則のひとつである「核を使用せず」に適っていると考えている。ケリー国務長官、カーター国防長官、モニツ・エネルギー長官ら政権内部の政府高官の間では大統領に反対意見を伝えているようだが、残り任期の少ないオバマ大統領としては、ノーベル平和賞を授与された立場からも自説を貫いてもらいたいものである。