ムンバイのタージ・マハール・ホテルを占拠して最後まで抵抗していたテロリストたちは、発生から3日経って完全に制圧された。明らかになった死者は195人を数えるという。まだ真相は解明されていないが、犯人たちは相当訓練されていたらしい。タージ・マハール内部は爆弾が爆発し、激しい銃撃戦の跡もあり、入店テナントは完膚なきまでに破壊されていた。外からは分らないが、内部の破壊は度を超しており、元の姿に戻るには相当の時間がかかるようだ。とにかくたった一度きりではあるが、ホテル内の格調高い雰囲気を味わった者としては残念でならない。インド人もムンバイの名所のひとつと考えていた1903年建造の名門ホテルが無残な姿を晒しているのを残念がっている。
犯人は10人ほどが射殺された中で、1人が身柄を拘束されている。パキスタンを拠点とするイスラム過激派「ラシュカレトイバ」ではないかとの疑いが強まっている。この組織は同じムンバイで2年前に連続列車爆破テロを引き起こし、200人の死者を出している。インド・パキスタンの外交関係や、カシミール帰属問題、イスラム系地区独立問題もからみ、問題の複雑化がネックになっている。しかし、インド政府としてはパキスタン政府が何と言い逃れようと、自国のメンツを賭けて原因を突き止めねばなるまい。
一方、ムンバイ・テロより一足早く事態を混乱させていた二つのバンコック空港占拠事件は、今日も解決されず、昨日からついにウタパオ空軍基地内の滑走路を使用してチャーター機を飛ばすことになり、日航も直行便で日本人旅客を帰国させている。それにしても反政府団体・民主主義市民連合(PAD)が、完全に空港内を管理している今回のデモの様子には驚きを禁じえない。空港内への立ち入りは、PADのチェックを受けるという本末転倒の事態になっている。今のところ軍によるクーデターの危険はなさそうだが、いつまでこんな異常事態がもつのか。ソムチャイ首相の意向を受けた警察がPAD代表と話し合いを始めたが、どうも決裂したらしい。観光客が敬遠し、経済活動も制約され、国際的な信頼も失いつつあるタイは、そろそろ目覚めないと折角の経済上げ潮ムードが反転、急降下しかねない。こういう世界の注目を集め、その難題を解決しなければならないリーダーは大変だが、その点では日本の首相なんて、これらの国々に比べれば経済は安定しているし、国家的なテロ事件は起こらないし、気楽なことである。この気楽さが、放言、失言の大連発になるのかも知れない。
今朝の朝日に面白い記事が載っていた。「呪いのサルコジ人形」が売り出され、大統領が発売元に回収を求めた訴訟で、パリ控訴院は大統領主張の一部を認め、発売元に対して人形が違法だと掲示することを求めた。そもそもこの人形が裁判沙汰になったのは、サルコジ大統領の布製人形に針を刺すというサド的で、大統領個人を侮辱したものだったからである。しかし、裁判の過程で大統領が発売元に回収を求めたことに対して、一審では「表現の自由とユーモアの範囲内」とした。それに対して大統領側が上訴して、今回控訴院は、人形が大統領の尊厳を損なうと判断した。だが、商品回収までは行過ぎとしている。この流れの中にはフランス人のサルコジ大統領への気持ちや考えが表れている。昨日山崎さんはサルコジがフランス人の間で不人気だと言って「猿誇示」と読んでいたが、なるほどと思う。あれだけ外交分野で活躍して実績を挙げても、即人気とは行かないものだ。その点でも日本の首相は楽なもんだ。