631.2009年2月3日(火) 新たな老人問題発生か。

 NHK「クローズアップ現代」で、介護付き住宅で呻吟する老人問題にスポットを当てていた。都心部で生活保護を受けている一人暮らしの老人が、役所の紹介で地方都市の介護付き施設に入居する話である。入居前に知らされた話と実際の待遇が異なり、施設入居者は期待していた待遇を受けられず、知り合いもなく遠い所で喘いでいる。この問題に2つの視点から問題が取り上げられた。ひとつは、老人は入居先で住民登録をしていない。その理由は、住民登録を認めれば市町村にとっては新たにかかる経費を負担しきれなくなるので、やむを得ず登録を認めないことになる。そのために住民登録をしている役所が施設の費用を負担することである。もう1点は、住民登録地が施設と離れているために、役所が充分フォローし切れないことである。

 これから高齢化は益々拍車がかかる。この傾向は止まることはない。番組では専門家の大学教授がコメントを述べていたが、抜本的な解決策につながるものではない。むしろ、少子高齢化問題はどんどん悪くなるだろう。地方都市は過疎化の傾向が高まり、そのために都心部からの流入人口を増やすため可能な限りの対策を練っていたと喧伝されてきた。ところが、実情を聞いてみると人口は増えて欲しいが、年寄りはご遠慮いただきたいと露骨な本音が聞かれる。結局みんな自分たちにとって都合のよい、虫の好い話ばかり求めているわけだ。

 老人の受け入れを地方都市が拒否することから、今後新たな問題を産まなければよいがと心配になる。福祉問題は国家プロジェクトとして検討すべき重要課題だと思う。

 日経の夕刊に「プロムナード」というコラムがある。フランス文学者の鹿島茂氏が「最後の砦の陥落」なる興味深いエッセイを書いている。偶々鹿島氏は高校の後輩でもあるが、中々辛らつな内容でもある。日本の文化、教養が危険水域に近づいていると警告?を発しているのである。文化の最後の砦である筈の医者が完全に無教養層に転落しつつあると嘆いている。医者が読んだらかっとなるようなエッセイである。鹿島氏の主張はこうだ。かつて文学史に名を連ねた作家の割合は、医者が多いという点が面白い。森鴎外、木下杢太郎、齋藤茂吉、安倍公房、北杜夫ら多士済々である。その理由として医者にはかつては①インテリジェンス、②金、③暇があった。それが現代の医者はそうではなくなったというのである。その他諸々の理由があるようだが、ちょっと斜めに構えた視点は、なるほどと思わせるところがある。

2009年2月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com