658.2009年3月2日(月) どうなる文化財の行方・・・。

 この冬は暖冬だそうである。特に東日本では戦後2番目の暖かさだという。梅の開花は、都内では平年より21日も早い。この温暖化傾向は、今更始まったことではないし、日本だけに限ったことでもない。しかし、今後地球温暖化の傾向は一層加速するだろう。温暖化によって氷雪は融解して海面が上昇する。低地帯は水没し、河川は氾濫する。スイス・アルプスやカナディアン・ロッキーで毎年氷河が後退していく状態を私自分の目で確認しているから間違いない。各国の利害が対立して温暖化防止のためのコンセンサスがまとまらない現状では、どんなに逆立ちしてもこの温暖化傾向は止まらないだろう。

 さて、数日前にパリで競売に付されたイブ・サン・ローランの遺品のうち、1860年の第2次アヘン戦争時に略奪された十二支にちなんだブロンズ像、ネズミとウサギの頭部像を39億円で落札した人物が中国人だったことが明らかになった。しかし、その中国人は落札したが、代金は支払うつもりはないと言っている。文化的な価値の高い銅像の所有権は中国政府にあると主張を崩さない。事実同作品はアヘン戦争の際北京侵攻で清朝の離宮「円明園」からフランスが略奪したもので、中国政府には返還を請求する権利があるとフランスに対して返還要求していた。

 この種の問題は、植民地国家と統治国との間では充分あり得ることだ。イギリスやフランスがどれだけ植民地から多くの文化財を略奪して母国へ持ち帰ったか。ロンドンの大英博物館に展示されている作品のうち、どれだけイギリスが植民地から奪ったものが展示されているか。エジプトから持ち帰ったミイラに始まり、アテネのアクロポリスから剥がした看板、パリ・コンコルド広場に建つオベリスクもナポレオンがエジプト遠征の際持ち帰ったものだ。

 言い出したらきりがないが、これはやはり本来の持ち主へ返すべきものだろう。どうしてもそれが難しいなら、レンタル契約を結んでレンタル料金を毎年支払うのが筋であると思う。

 翻って日本の文化財はどうか。ボストン美術館でも、フィラデルフィア博物館でも沢山の、素晴らしい浮世絵が展示されている。しかも保管方法が良いのか、まったく傷もなく、品質も落ちていない。江戸文化がまさに所を得たと感じたくらいである。これらは惜しいが、二束三文で日本が売却したものであり、こればかりは買い戻すより仕方があるまい。

 フランスと中国の間で、その所有権を巡って文化財の行方がどうなるか、当分の間話題がつきないようだ。

2009年3月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com