NHKが3年前に視聴者からアンケート募集した「世界遺産ベスト30」番組が再放送された。どんな観光地がポピュラーかと興味を持って改めて見直してみた。5月に鎌倉で「世界遺産の旅」の講演を行うので、参考にしようとの気もある。ベスト30の中に私が訪れた観光地は、18箇所しかなかったが、このリストを見て感じたのは、全方位的に選んだわけではなく、投票した視聴者の限られた視界に入ってきた、個人的な好みや思い込みで選んでいるので、必ずしも公平ではないような気がする。例えば、ロシア、バルト三国、北・東・中欧、英仏独、中東、メキシコ、東南アジア、ギリシャ、トルコ、イラン、パキスタン等偉大な文化遺産を有する地域や国々からただの一ヶ所も選出されていないことではっきりしている。加えて30箇所のうちに自然遺産が13箇所もある。やはり人間の叡智が造り上げた文化遺産にもっとウェイトを置くべきではないかと思う。
幸い1位のマチュピチュ、2位モン・サン・ミッシェル、3位イグアスの滝は、実際現場を訪れた感じでみて公平な選出だと考えているが、美とか文化に序列をつけるのはつくづく難しいものだと思う。それにしてもルクソールの王家の谷、敦煌、ポン・デュ・ガール、ペルセポリス、アクロポリス、プラハ、モヘンジョダロ、名峰スイスの山々などが入らないのはどうしてだろう。
さて、過日「かんぽの宿」一括売却問題で、日本郵政に対して鳩山邦夫総務相がイチャモンをつけ、売却を取り止めさせて、契約を白紙に戻した。売却価格決定の過程に不明瞭さと疑義があることが、鳩山大臣に賛同する世論が大臣の強気に勢いをつけた。そして、今度は東京駅前の旧東京中央郵便局ビルの解体・建替工事に文句をつけた。このプロジェクトはもう走り出して解体へ踏み出してしまっている。確かに、文化的価値の高い建造物を土地の活用上メリットがあるからと言って、安易に高層ビルへ立て替えるのは、問題だと思う。しかし、それをまったく無視したわけでもあるまい。
鳩山大臣の行動は、むしろ筋を通すとか、文化遺産の保護とかときれいごとを言うより、自分の存在感とか権威をひけらかすパフォーマンスが大きいように思う。「・・・と言ってんだ」とか「文化が分らないからこうしてやってやってんだ」とか、思い上がった横柄な態度がミエミエで、鼻持ちならない。この傲慢さは政治家の最も嫌味な点でさえある。やはり所詮苦労知らずの世襲議員だなぁと思ってしまう。