676.2009年3月20日(金) マス・メディアの中立とマス・メディアへの圧力

 共同通信の原寿雄氏から先日近刊の岩波新書「ジャーナリズムの可能性」を送っていただき、お礼に拙著をお送りしたところ、その出版記念会の案内状をいただいた。まだ、途中までしか読んでいないが、その中に知人の阿部正義氏に触れた一項がある。阿部さんから企業のマス・メディアに対する圧力について情報をもらったそうである。それによるとトヨタ、パナソニック、キャノン等が自分らに対して不利な記事を報道したマス・メディアには、CM提供を意図的に差し控えるというものだ。営業妨害的行為であり、陰湿でそこまでやるとは思えないのだが、実際のところ本当らしい。一昨日阿部さんに会った時に、その話をした。

 原氏の著作によれば、近年マス・メディアの公平性、中立性がかなり損なわれている。殊更読売グループの‘なべつね’こと渡辺恒雄氏の仕掛けによる、昨年の自民・民主の大連立構想の如きは、政治的に中立であるべきマス・メディアの有力者が介在するというより、主役となって舞台回しをやっている。言語道断の所業と容赦なく切り捨てている。それほど現在マス・メディアの中立性が危ぶまれているのだ。

 そんな中でマス・メディアと企業との関係が益々不穏な間柄になってきたのではないか、と邪推されるような書き方を今朝の日経紙「春秋」で読んだ。「春秋」によれば、ニュース面に不景気に直面して最近大企業のトップ交代があまりにも目立つと指摘して、トヨタ、ソニー、スズキ、東芝、日立等々の社長交代を取り上げている。社長の最も重要な仕事は後継者育成であるとの論旨に対して、日立が元副社長で傍系会社会長を日立本社の社長に据えた。この人事に対して日経は極めて批判的である。特に、現社長よりも7歳も年長という点を撞いて庄山悦彦会長を厳しく追及している。日立は今期7千億円の最終赤字だという。「社長人事は恐ろしい」の言葉で締めくくっているが、これに対して日立が来期どの程度日経に広告を掲載するだろうか。下衆の勘ぐりだが、日立の日経紙への広告量を注視してみたい。

 今日3月20日は春分の日で祭日だが、国内外であまり芳しい記念日ではない。14年前は、悪夢の地下鉄霞ヶ関駅オウム・サリン事件があった。6年前にはイラク戦争が勃発した。このニュースはウラジオストック空港の待合室のテレビで知った。新潟空港から新潟駅に到着したら、地元のテレビ局に開戦を知っているかどうかインタビューされた。アメリカは必ずイラクを攻撃すると確信していたので、特に驚かなかったと応えたが、あれからイラクは一気に泥沼と化した。今年8月にはイラクの駐留米軍がすべて撤退する。開戦以来数十万人のイラク人が命を落とし、米兵も4千人以上が死んだ。これほど多くの犠牲者を出したイラク戦争は一体何だったのか。

2009年3月20日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com