682.2009年3月26日(木) 映画「フロストXニクソン」の試写会に

 小中陽太郎さんから半蔵門の東宝東和本社で映画「フロストXニクソン」の試写会があるとご案内をいただいたので、日本ジャーナリスト会議(JCJ)の紹介ということで試写会見学に出かけた。明後日から封切りのドキュメンタリードラマである。40席足らずの小さな試写室だったが、以前にやはり小中さんの紹介でビルマ派遣日本兵の映画の試写を新橋で観たことがあるが、そこも座席数はそんなものだった。ごく限られた人を対象にした試写会なので、あまり大規模な会場は必要ないようだ。

 映画は1977年にアメリカで放映されたリチャード・ニクソン元大統領に対するインタビュー番組の映画化である。アメリカではエポック・メークで伝説的なトーク番組となり、4,500万人の国民が観た高視聴率番組となった。ニクソンはその3年前の1974年8月アメリカの歴史上自ら辞任した初の大統領という不名誉な称号をもらってしまった。その辞任の時、丁度カイロにいてこのニュースをテレビで知って驚いたものだが、ニクソンは大統領として進んでウォーターゲート事件の隠蔽工作をやった自らの罪を認めず、国民にも謝罪せず、その後を継いだフォード大統領の「訴追せず」で、偽証罪と証拠隠滅罪が不問に付された。正義感の強いひとりのジャーナリストがこれを大統領としての権力乱用と不正だとして著書で告発した。

 辞任3年後のこのインタビューでニクソンが、イギリス人のニュースキャスター、デビッド・フロストの挑発に乗って「いかなる不正も大統領なら許される」と答えたことが致命傷となり、罪を認め、テレビの前で国民に謝罪する結果となり、政治家として再出発を目指していたニクソンは再起不能に追い込まれた。

 なかなか工夫を凝らした映画で、舞台は大きく動かず、ほとんど室内で熱の入ったトークに終始しているので、事件の歴史と背景を知らないと精神的に疲れるし、ストーリーも分りにくいと思う。アメリカの陪審員制度に焦点に当てた、かつての名画「12人の怒れる男たち」の舞台設定に似ている。ハリウッド映画がお得意とする恋愛シーンがほとんどないのも珍しい。

 確かに力作であり、ニクソンのずる賢い性格や、現職を退いた後の目標を失った人生、を微妙に描いていてなるほどと思わせるところがあり、結構面白い。映画化以前に舞台化されたようだし、日本人には記憶の彼方へ行ってしまったウォーターゲート事件だが、アメリカのジャーナリズムにとっては警鐘を鳴らす事件だったということが窺える。中々の問題作だと思う。

2009年3月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com