2007年に若松孝二監督がメガホンをとった映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」の映写が財団の主催により所沢市民文化センターで行われた。ぜひ観たいと思いながら、見逃していた映画であるし、偶々早稲田出版の大塚靖敏編集長の勧めもあり、初めて公営の所沢文化施設へ出かけた。西武鉄道・航空公園駅から広い道路が一直線に伸びて、都市計画がきちんと整備され、目指す施設までの街頭風景は清潔で緑の多い理想的な東京の郊外都市という雰囲気である。
期待していた映画は3時間10分の長編で、あの世間を震撼させた事件をリアルに見せてくれた。ついあの時代を思い出していた。60年安保から続いた学生運動の延長線上に引き続き起きた東大安田講堂篭城事件、70年安保、全学連の分裂、などの1カット・シーンであるが、1972年2月10日間に亘って雪の降る山中で展開された警察機動隊と連合赤軍の攻防は、まさに当時の昂揚感の演出、そして分裂を繰り返す学生運動が瓦解する端緒となった事件である。かなり事実に立脚して描かれているが、当時問題になった連合赤軍内部のリンチ、虐殺のおぞましいシーンは少々気の弱い人には見ていられないのではないか。殺し合いとなった赤軍のメンバーもほとんどが有名国立大学生で、「革命を目指す」の一念で突っ走り、結果的に無残な結末となった。今でも思い出すことができる学生たち、塩見孝也、森恒夫、坂東国男、植垣康博、坂口弘、田宮高麿、吉野雅邦、永田洋子、重信房子、金子みちよらの名前が妙に懐かしかった。
上映後小休憩を経て、若松監督、主演した永田洋子役・並木愛枝、森恒夫役・地曳豪、坂東国男役・大西信満が主催者を交えてトークをやってくれた。若松監督の狙いはこの事件を反権力の視点で描きたかったそうだ。それ以前に他の監督があさま山荘を取り扱った映画が2作品(ひとつは原田真人監督「突入せよ!あさま山荘事件」)あったが、すべて権力サイドから撮っている。これは真実とは言えない、自分なら反権力の立場から撮ると決めた。それがこの映画である。実際機動隊員が射殺された場面は、スクリーンに見られなかった。しかし、警官が殺されたことが警察側を結束させ、執念となって山荘へ突入し、5人のメンバーを検挙した画期的なエポックと経緯からすると、この場面も取り入れた方が公平で、真実に近いのではないかと思う。実際警官が射殺された時は、連合赤軍もひどいことをすると憤慨したくらいである。
当時の雰囲気は割合表現されていたと思う。やや疲労感を感じたが、久しぶりに学生運動史も思い出した。でもあの頃の熱気はもう見られない。監督も言っていた。今の学生にはその元気はないと。
帰りがけに若松監督に「60安保」へ誘ってくれたラグビー部の先輩で、全学連書記長だった清水丈夫さんをご存知か尋ねてみた。名前は知っているが、直接は知らない。むしろ委員長だった唐牛健太郎を良く知っていると話してくれたが、パフォーマンスの派手な唐牛らしいなと感じた。