中国が「万里の長城」の全長をこれまでの6,350 kmから総延長8,851 kmに伸ばしたと公表した。2,500kmも増えた計算になる。理由は、従来の長さはレンガなどで造った人工壁だけだったが、これに崖などの天然の地形を利用した壁部分を加え双方を併せて「万里の長城」として確定したそうである。元々「万里の長城」は世界遺産の中でも、人類が造り上げた文化遺産の最も価値ある建造物のひとつであると考えている。実際八達嶺の現場に立ち、来し方を静かに振り返ると歴史がその巨大な建造物とダブって悠久の歴史と文化をイメージさせてくれる。
それにしても月から見える地球上唯一の建造物と言われている(実際には見えないらしい)だけに、スケールもばかでかい。最近の写真などを見ると城の上は歩いている観光客で押し合いへし合いの混み具合で、ラッシュ時は大変である。確かにこの長城は一見の価値がある。それが、ここで唐突に城の長さが3割ほど伸びたのは、中国人らしい遠大な観光政策が秘められているのではないかと考えるのは、うがち過ぎだろうか。
今日の日経夕刊「プロムナード」に作家清水義範氏が「ネット時代の出版ビジネス」と題して著作権に関する考えを書いている。グーグル社が主要図書館の蔵書を著作者の許諾なしにスキャンし、電子的データベースを作成して検索出来るようにした。訴訟を起こしたアメリカの作家組合と出版協会が昨年グーグルと和解した。国際条約を結んでいる関係で日本にもその影響が及ぶ。日本の作家も和解に応じるか、どうかを応えるよう著作者個人へ宛てて、各協会や出版社から書状が届いていて、どうするか返事をしなければならない。この悩みを清水氏は書いている。
実は私の許へも先日著作権を委託している日本文芸家協会から、書状が送付されてきた。先日取材した際小中陽太郎氏もこのことを話されていた。日本文芸家協会としては、グーグルとの和解を承諾しようとの考えだが、もし反対なら個人的にやって欲しい旨の主旨であった。協会とまったく同じ考えはとらずに、とりあえず協会と同じ「和解承諾」して、しかる後に協会とは別の考え方で、入金は遅れても構わないので、著作権料がいただけるならいただきたいと返信した。
私のケースは、著作がないに等しいので、ほとんど問題はないが、多数の著作を抱えている作家、特にアメリカ人読者が好みそうな作品のある、村上春樹氏や、三島由紀夫氏遺族らはどう返答するのだろうか。
それにしてもグーグルのやり方はあくどい。文学作品に著作権があるのは、ごく当たり前の話で、契約社会のアメリカで商売しているグーグルが著作権侵害を承知のうえで無断使用とはモラルに悖る。言語道断である。最近も道路上からカメラを回して住宅街を写して、それをインターネットで見られるような「ストリートビュー」なるシステムを公開して他人の家の中まで覗けるような無作法な画面を提供している。因みにわが家を検索したらカメラが家の前を走って行ったが、幸い見られて恥ずかしいような光景は写っていなかった。しかし、近所で洗濯物を撮られていた家もあった。これも各家庭の許可を得ているわけではあるまい。グーグルのやり方は事前了解を得ずに土足で家の中へ入ってくる「ドロボー」と変わりない。こういうのを「自由」といって放置しておいて良いものだろうか。