5月25日に地下核実験を行った北朝鮮に対する国連制裁決議がやっと全会一致で採択された。予想以上に時間がかかったのは、例によって常任理事国の中国が態度をはっきりさせなかったからである。いつも中国と歩調を合わせて反対するロシアが今度ばかりは、実験直後に制裁に同調した。それでも中国は検討に次ぐ検討を重ねて時間稼ぎの末に、漸く若干後退した共同提案を受け入れた。中国の思惑は明らかである。いつまでも北朝鮮へ影響力を残しておきたいからである。これも最近の中国の定番パフォーマンスのひとつである。これから国際社会が、中国に振り回される予兆である。
制裁の内容は、屋上屋を重ねてきて今更即効性はあまり期待出来ない。骨子は06年の制裁決議に違反していると非難したうえで、今後核実験や弾道ミサイル発射を行わないよう要求し、6者協議への即時無条件復帰を呼びかけている。追加的な制裁措置として、公海上の船舶の貨物検査や金融制裁もある。今日午後5時北朝鮮テレビがいつも通りベテランらしい女子アナが憤慨した口調で、今後ウランの開発を行うと公表した。
それにしても問題が起きる度に、こういう国家運営の仕方があるのかと北朝鮮の対応が不思議でならない。相手の好意や道理、常識を逆手に取って居直って恫喝する。まるで悪辣なヤクザ的手法である。いつかこの国が崩壊した時に、全国民が世界中に対して恥ずかしさを感じるのだろう。もちろんその時は金正日・総書記はこの世にいないだろうが・・・。
先月25日に行った武者陵司氏との取材記の提出期限に当り、大体書き上げていた原稿を推敲して、秋田事務局長宛送信した。武者氏へのインタビューで感じたのは、氏の歴史認識が極めて深いということだった。横浜国大経済学部を出て大和証券に入社した経歴からすると、近代経済学を学んだと思っていたが、大塚経済学を専攻したというので、社会主義的な書も読んだと言っておられた。そのせいでかなり歴史観をはっきり表現された。面白いと思ったのは、現代の余剰資金をエジプトのピラミッド建設を参考に、現代のピラミッド建設に投資して昔の雇用の創出のような投資を行うべきで、それは地球環境の再生のための投資だと言っておられたことである。今日活躍しておられる証券アナリストの中でも多少楽観的な見方をされる方であるが、信念がはっきりしていて説得力があり、随分目から鱗が落ちる話を聞かせてもらった。印象に残る取材だった。