外務省の高官がえらいことをやってくれたものである。1960年以来度々ことの真相が囁かれ、裁判沙汰にまでなった外交秘密文書が破棄されていたとの今朝の朝日記事には、呆れかえってまったく開いた口が塞がらない。もはや外交文書に日米政府間で核持ち込みの密約があったことを否定する根拠はない。アメリカで公開された公文書や、村田良平・元外務事務次官と当時の吉野文六・外務省アメリカ局長の証言で明らかなように、核持ち込みを認める密約が存在したことは公然の秘密ではなく事実なのである。これを否定しているのは、日本政府関係者だけで、それも証明する根拠もなく、馬鹿の一つ覚えのように、ただ「ないものはない」の一点張りである。こんな駄々っ子のような言い分を誰が信じようというのか。
ところが、あると思われていた公文書は外務省によって廃棄されていたのである。都合が悪ければ隠し、いざ証拠を求められる前に証拠を捨ててしまう。外務省としては立場が悪くなったので、大切な外交文書を敢えて廃棄処分にしたと思われても仕方がない。流石に朝日の解説でも「外務省内にあった『核密約』に関する文書がひそかに破棄されていた疑いが強まった。密約で国民を欺き続けているだけでなく、それを検証する可能性を現在と将来の国民の手から奪ったという意味で、二重の犯罪行為だと言える」と手厳しい。
更に性質の悪いのは、2001年4月に情報公開法が施行されるのを前に、外務省内の文書保管のあり方を見直した際、存在しないはずの文書が将来発覚する事態を恐れたというから悪質極まりない。60年安保から今日まで外務省のやってきたことは、右翼政治家の尻馬に乗ってアメリカと密約を結び、国民を騙し、毎日新聞の西山太吉記者が特異な嗅覚で密約を突き止めると、これを逆手に取りスキャンダラス化して裁判へ持ち込み、例えアメリカ政府の密約文書の存在が明らかになっても、知らぬ存ぜぬの一点張りである。いよいよ立場が不利になると見るや、国民から開示請求が出る前に処分して証拠隠滅を図る。外務官僚の天下一品のあくどさは、大量殺人犯、大型脱税犯人以上である。
山崎豊子の「運命の人」4部作が今売れている。これこそ本件の外務省秘密外交文書漏洩事件を取り扱ったものである。それほど話題をさらい、世間の注目を集めた事件の証拠書類を国家にとって都合が悪いからといって、いとも容易く捨ててしまうなんてことが認められようか。デタラメばかり繰り返し、何も外交問題を解決出来ない外務省の国賊役人どもはこれだからダメなんだ。ふざけるな!と言ってやりたい。
文化人類学者の川喜田二郎氏が亡くなられた。享年89歳だった。新しいアイディアのカード使用法であるKJ法を編み出し、一世を風靡した。私も若いころにこのKJ法を学んで、随分役に立った。川喜田氏は単なる学者としてではなく、専門のフィールドから野外を歩いて、裏づけをとった。ただ研究室で研究活動するだけではなく、実践的に証明する行動科学を実践して多くのファンを惹きつけた。心よりご冥福をお祈りしたい。
今日7月10日は妻の64回目の誕生日である。玉川高島屋内に出店している佐賀牛のステーキを食べさせてくれる「金の箸」で密かに内祝いをする。