駒沢大学春季公開講座は今日が最終日である。大学はすでに夏休みに入っている。そのため元々出席者が少なかった現役駒大聴講生は誰も出席しなかった。柴野京子講師は、出版周辺の現状について今日まで話を続けられたが、秋には他の講師と交代するということで最後の講義になった。普段あまり意識しないテーマについて出版界内部から現状をじっくり説明された。今日のテーマも「書棚と平台」という珍しい内容だった。今日までの講義で、とりわけわが国の出版業界における岩波書店の大きい存在感が印象に残った。
さて、北海道大雪山系のトムラウシ山(2141m)周辺を登山中のツアー参加者の中高年者が遭難して、近くで亡くなった別の登山者を合わせ計10人が亡くなった。強風雨による天候悪化で体力を消耗し、バタバタと倒れたらしい。ツアーで全国から参加した人たちは、その死者の出身地をみても広島、岡山、愛知、静岡からの参加者で、普段はお互いに知らない人たちが、まちまちに北海道の山登りのために集まってきた。
これは東京のアミューズトラベルという旅行会社が主催したもので、以前からかなり登山ツアーを企画、販売していたようだ。根本的な原因は今後明らかにされるだろうが、天候判断を誤ったとか、引き返す決断がなかったとか、今にして思えば反省点はたくさんあるだろう。
しかし、遭難原因以前の疑問点として、お互いに知らない者同士が一緒にパーティを組んで登山することに問題はなかったかどうか。トムラウシは作家・深田久弥が「日本百名山」の中で「威厳があって、超俗のおもむきがある。あれに登らねばならぬ」と畏敬の気持ちを抱いた名山である。日帰りのハイキングならともかく、北海道最高峰の残雪の大雪山山中の山小屋に2泊もするというハードスケジュールである。よほどチームワークがないと他人のことまで気が廻らないだろう。遭難した人も数箇所に分れて亡くなっている。普通ならパーティから離れること自体がおかしい。普段から一緒に行動を共にしているパーティなら、絶対取らない行動である。厳しいことを言うようだが、1人ひとりがバラバラでお互いを助け合う気持ちがなかったようだ。登山は気持ちが通じる仲間とともに登ってこそ、頼りになり楽しい思い出となる。
登山ブーム、特に高齢者登山ブームといわれているが、実際には高齢者の登山による遭難者の数は年々増えている。この辺りで浮かれることなく、高齢者登山について真正面から問題点を探し出し、真剣に検証する必要があるのではないだろうか。