地球物理学の権威で、国立極地研究所・神沼克伊名誉教授から、新宿の「ハイアット・リージェンシー東京」でランチをともにしながら地震と原発のお話を承った。1月に兄も交えて神沼さんとランチをともにして以来の3者昼食会となった。来月神沼さんにJAPAN NOW観光情報協会で専門の南極について講演をお願いしているので、今日はその打ち合わせもあった。未だ余震の続く熊本地震について断片的に話を伺ったが、いま問題になりつつある原発稼働の危険な問題点をお尋ねしたところ、大地震が起きる可能性についてはあまり深刻には考えておられなかったように受け取った。
兄も連れ合いを亡くしてからまだ1年余で、独り者の寂しさからまだ完全にはふっきれてはいないようだが、高校在学中から特に親しかった友ととりとめもない会話を交わすことがストレス解消に役だつように思っている。これからもこういう会食の機会を作りたい。
帰りの東横線車内で1人の乗客が「日刊ゲンダイ」を読んでいたので、見るとはなしに覗いてみると「熊本地震、次は京都、小田原、北九州」と大きな見出しが見えた。ぎょっとした。今朝未明で震度1以上の余震が14日以降すでに700回を超えたくらい、熊本地方には余震が続いて住民に恐怖感を与えている中で、こんな形で具体的に地震を予言された地域の人たちの気持ちは穏やかではあるまい。確認のために、すぐ駅売店で同紙と「夕刊フジ」を買い求めて記事を読んでみると「夕刊フジ」にも、「北九州あすM8」とショッキングな見出しが出ている。これほど具体的に地震予報を流したのは、台湾の「地震預測研究所」のインターネット上のブログである。この研究所は、これまでも1月「北海道北西沖地震(M6)」、2月「台湾南部地震(M6.6)」を的中させ、熊本地震でも今月9日に3日以内に南日本でM6.3の地震が起きると指摘し的中したので、言葉は悪いが少々図に乗っていると思う。不安な気持ちを抱えている被災地の人たちの気持ち斟酌することなく、一層疑心暗鬼にさせる無神経で不用意な情報の提供はもう少し考えてもらわないと困る。実際京都大学防災研究所の西村卓也(地震学)准教授も「不安をあおるような怪情報だ。現在の科学で『絶対ない』とも否定できるわけではないが、逆に『来る』などと確証を持って言うこともできない。九州の人々が不安がっている時に、こういう情報を流すのはやめてほしい」とごく当然のコメントを述べている。
どうしてこういうブログが誰の目に入る形で流されたのか。人騒がせにもほどがある。奇を衒ったのか、この地震研究所の非常識と無神経には呆れるばかりである。なぜ一般の目に触れさせないようにして、まずは日本の気象庁なり、それなりの公的組織や団体に対して内密に具体的な情報を知らせることができなかったのだろうか。結果はどうなるか、明日にならなければ分からないが、ひょっとすると予測は当たるかも知れない。だが、この地震研究所は他国の罪もない人々の心をかどわかし、不安に陥れたのである。この種の軽薄な情報バラマキについては、地震が落ち着いたら日本として当該地震研究所に厳重に抗議するべきだと思う。