832.2009年8月23日(日) 横浜市が来春から歴史教科書を採用

 亡父の元部下で、私自身子どものころからよく存じ上げている横浜市内在住の正木清幸さんからメールをいただいた。もう90歳近い年齢にも関わらず、PCを駆使するポジティブな方で、戦時中は経理部員として従軍され、ビルマ戦線で大層ご苦労された。先日もその従軍苦闘記録を名古屋・中京大学の機関紙に寄稿され、改めてそのご苦労をお労いする思いだった。

 いただいたメールには、神奈川新聞によると横浜市教育委員会が来春から「新しい歴史教科書をつくる会」が編集した歴史教科書の使用を決定したと知らせていただいたものである。実際に戦争に関わった元戦士として、以前から昨今の日本の右傾化を心配されておられたが、横浜市教育委員会の決定はそういう心配を裏付けるものである。

 ところでやはりと言うべきであろうか、今朝の朝日新聞社説も早速「つくる会教科書・横浜市の採択への懸念」として取り上げている。それによると4年前に採択した当時は、つくる会の歴史教科書の採択率は全国で僅か0.4%だった。今では、東京都杉並区、栃木県大田原市が継続して使用することを決めているが、政令指定都市では横浜市が初めてだそうである。リベラルな都市と見られていた横浜市だったが、どうしてこうなったのか、いかにも時世を象徴しているように思える。

 30年以上前に私たちが居住していたころの横浜市は、安保反対闘争で国会議員の先頭に立った元社会党委員長・飛鳥田一雄氏が市長を務めていただけに、革新都市として市民からも信頼されていた。それが、今では中途半端で市長が市長職を投げ出すような保守看板の都市に変った。

 今更つくる会の教科書についてコメントするのも憚られるが、天皇や神話を重視し、近現代史を日本に都合よく見ようとする歴史観が色濃く、中国への侵略、朝鮮半島の植民地支配については不十分で、沖縄戦の集団自決にも触れていない。内容は明らかに義務教育の中で右寄りの教育を行おうというものだが、問題視しなければならないと思うのは、委員会の採決が僅か6人の委員の無記名投票で採用が決まったということである。こんなに大事な問題をそんな少数の人だけで簡単に決めて良いものだろうか。6人の委員に採決の権限はあるが、実際に使うのは教師と生徒であり、30日の横浜市長選に立候補している各候補者にも考えを聞きたいというのが、朝日の意見だ。

 それにしても日本では国民的議論が真剣に成されない間に、一方の方向にぐんぐん引っ張られる流れがいつのまにか出来てしまう傾向がある。それが怖い。

2009年8月23日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com