863.2009年9月23日(水) NHKドラマ「白洲次郎」にまつわるエピソード

 一昨日から今日まで3夜連続でNHK番組「白洲次郎―戦争を背負った男」が放映された。今年2月末に2回放映されたが、3回目は準主役の吉田茂役の俳優が健康を害して撮影出来ず、今回その最終回分を加えて連続3回分を一気に見せてくれた。合計4時間半にのぼるテレビドラマを観たのはほとんど記憶にない。評価としては難しいが、結構楽しめた。今日の最終回で白洲がケンブリッジ大学でケインズ教授に学んだとは初めて知った。あのアカデミックなケンブリッジの街とキャンパスの雰囲気は、中々落ち着いていていい。1995年春ロンドンに駐在中だったアルペンクラブの大林玄一さんご夫妻に、妻ともども車で案内してもらったことを懐かしく思い出した。

 2月は関心がありながら、部分的に観た程度だったので、話の筋が通らなかった点もあり、今度は3回分をしっかり観るつもりで待ち構えていた。

 主役の白洲次郎が最近になって脚光を浴びているが、それは白洲のようなイギリス帰りで英語を解し、自分で確たるプリンシプルを持っている人物が今世間から渇望されている証拠であるのかも知れない。終戦後マッカーザーに堂々と抗議をした潔い行動と、戦後日本経済復興のための礎を作るために通産省の再建に取り組み、吉田茂の懐刀としてサンフランシスコ平和条約調印のために随行員として同行し、吉田の手となり、足となって活躍しナビゲーターぶりを発揮した姿を描いたものである。

 実は、今取りかかっている「知の現場」出版プロジェクトでは、22人の著名な言論人を取材しているが、3月末にこの番組の原作者のひとり、北康利氏をインタビューした。その折り北氏は、評伝作家として事実関係に誤りが発見された場合、どう対処されるかとの質問に対して、至極率直に事実が判明すれば、次の機会に訂正すると仰った。その一例が、昨日放映されたシーンの中にあった。白洲がGHQに乗り込んだ場面について、2月のテレビ放送後、マッカーサー財団からクレームがついたという。財団によれば、白洲がGHQを訪れた記録はまったく残っていないと言われたそうである。テレビではあれだけ何度も白洲がGHQを訪れる場面を映し出している。そんな馬鹿な話がとは思うが、実際に訪問記録が残っていないのでは、その訪問記録を証明しようがない。そこで、北氏はその当時マッカーサー総司令官が駐日アメリカ大使館に起居していたことを調べ上げ、白洲のアメリカ大使館訪問記録をチェックして、その訪問の事実が判明した。結局、それまでGHQだとばかり思っていた白洲のマッカーサーとの面会は、実はアメリカ大使館内であったことが分かったのである。

 こういう事実関係についてメールとハガキで友人に知らせたところ、結構意外な反応もあった。しっかり観てみると言う声が多かったが、昨夜放送されたテレビでは、舞台は相変わらずGHQだった。しかし、これは膨大な制作費を注ぎ込んだので、改めてアメリカ大使館を舞台にしたシーンを撮影するわけには行かなかったのだろう。その他にも、ゼミの堀勇弘氏から、主役・白洲次郎役を演じた俳優・伊勢谷友介が子息の小・中学時代の同級生だという知らせをいただいた。中々の熱演だったと思う。

 もうひとつ最終回の場面で、白洲チームとGHQスタッフチームとの憲法解釈について激論を交わす場面で、旧憲法の「天皇を輔弼する」の「輔弼」の語義について「advice」か、或いは「agreement」か、の議論が面白かった。改めて辞書を引いてみると「輔弼」には、「advice」「assistance」「counsel」と記されていた。

 北氏との取材記は私自身が書き終え、校正も終えて年内に共著として上梓されることになっている。メールでその点も知らせたところ、多くの友人が発行され次第買って読んでみたいと言ってくれている。その他にも、私自身は作家の小中陽太郎氏、同じく野村正樹氏、経済アナリストの武者陵司氏を取材した。どんな書物に出来上がるか、大きな楽しみである。

 さて、プロ野球セ・リーグで巨人軍が優勝を決めた。3連覇で33回目の優勝である。巨人軍オーナーを務めているゼミの同輩・滝鼻卓雄くんも今夜はいい気分で酔っ払っているだろう。

 子どものころから大の巨人ファンだったが、寄る年波か、このところ昔ほど野球に興味を持てなくなった。テレビでもほとんど観戦しなくなった。それでも巨人軍の試合結果は少々気にはなる。マジック「1」となったので、優勝決定シーンを観てみようと6回表からずっと観ていて、優勝決定の瞬間を見られ、取り敢えず良かった。これから、クライマックス・シリーズ(CS)、そして日本シリーズへと続くのだが、数日来少々話題になっているのが、両リーグともCSへの出場権を賭けた3位争いでセ・リーグでは目下阪神、広島、ヤクルトの3チームが争っている。問題は、セ・リーグの3位を争っているチームの勝率が5割を割りそうなことで、仮にそうなってそのチームがCSで勝ち上がり、日本シリーズでも勝ってしまうとセ・リーグでは巨人が優勝だが、日本一の座にペナントレーズで半分も勝てなかったチームが座るという奇妙なことになる。何だか不条理な話でもある。こうなるとペナントレースの意味とか、価値がなくなるのではないかと思う。やはりこれはおかしい。CSへの出場権は勝率5割を上回るという前提条件でもつけないと、しらけた空気が流れるのではないか。こんな逆転現象ぐらいプロ野球関係者は予測できそうなものだが、こういう些細なことを軽視することが、プロ野球人気に陰を落とすことになるのだ。

2009年9月23日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com