870.2009 年9月30日(水) ドナルド・キーンさんの日本文学への熱意に脱帽!

 アメリカ領サモア諸島近海でマグニチュード8.3の大きな地震があり、日本でも津波警報が出された。昭和35年のチリ沖地震の際には、発生後22時間を経て北海道に津波が押し寄せ、函館駅まで海水が達した。5年前にインドネシアを襲った津波の脅威を思い出す。

 今朝の朝日新聞に1頁全面を使って日本文学者ドナルド・キーンさんのインタビュー記事が掲載されている。内容も中々面白いし、教えられることが多い。お元気そうだが、87歳のご高齢と知り、その好奇心には驚くばかりである。2年前の小田実さんの葬儀では、確か弔辞を述べられた。その後小田さんを偲ぶセミナーでもスピーチをされた。小田さんの英訳本も出されている。

 インタビュー記事を読んで、初めて知ったことも多い。日本人が大きくなり、それは国際化と共通していると述べている。しかし、グローバル化が進む一方で、日本人の外への関心も薄れたと感じておられるようだ。

 「日本人の友人で最も国際的だったのは安部公房」「明治時代の日記文学の傑作は石川啄木の『ローマ字日記』」「永井荷風に会った時、すばらしい日本語で話をするのに感動した」「外国人に日本の小説を1冊推薦するなら、谷崎潤一郎の『細雪』」「ものを書く人は古典文学を学んで欲しい」と痛いことも言っている。私の場合「ものを書く人」と言えるかどうか何とも言えないが、30年前に初めて韓国・扶余市を訪れ瓦博士として知られた、李石湖博士宅を訪れた時、博士からも「日本書紀をぜひ読みなさい」と同じように古典を読むことを薦められたことを改めて思い出す。

 それにしてもキーンさんの日本語は見事である。日本文学を学んだのはコロンビア大学だったが、その時習った日本人の先生を尊敬し、大きな影響を受けたという。日本文化を高く評価するキーンさんは、日本はヨーロッパの文化より水準が高かったと仰る。中国人は外国人を尊敬せず、外国のことを知ろうとしない。日本人は外国のことを正しく知ろうとする気持ちが強かったことが日本文化のレベルが高い原因だと分析している。キーンさんは日本文学を読んで読んでやっと日本文学の真髄が分かるようになったように思う。そのキーンさんは日本の小説が最も花開いた時期は、戦後の10年間だと見ている。その中で、谷崎潤一郎、永井荷風、志賀直哉、太宰治、三島由起夫、安部公房を評価している。一応私もそれぞれ読んではいるが、キーン先生にはとても敵わない。脱帽!

2009年9月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com