3249.2016年4月5日(火) 若者が本を読まなくなり、書籍が売れなくなった。

 単行本や雑誌の売り上げが近年急速に落ちているようだが、それにはいくつか現代的な原因があると思う。その最大要因に若者が書物を読まなくなったトレンドがある。それに近年若者が溺愛しているスマホ利用者が増えて、書物まで電子書籍で読む人が増えたために、書店で購入する人が減っていることが大きいようだ。

 実際書物を読まない若者が増えたことは事実のようで、この傾向が進めば文系の学生はどうやって頭を鍛えるのか、特に創造性を養うには他にどんな有効な手段があるか分からなくなる。いま「吾輩は猫である」が、漱石没後100年記念として朝日新聞に再連載されているが、中学生のころに岩波文庫で読んだ時以来の記憶を呼び戻しながら、楽しんで読んでいる。細かいことは記憶の彼方であるが、ところどころ思い出してはひとり悦に入っている。やはり若い頃に良質の文学作品を読めば、必ず自分に還って来る。

 さて、このように書物が売れなくなっている昨今であるが、岩波書店が発行している隔月刊誌「文学」が、今年の11月、12月号で休刊になるという。これまであまり読んだことはないが、創刊が1933年というから歴史と伝統のある雑誌で、日本文学の発展に貢献してきたものだ。誇り高い岩波書店としては、休刊は苦渋の決断だったろう。

「文学」は三島由紀夫らも執筆した、最新の文学研究の成果を普通の読者に紹介する雑誌として必ずしも堅い雑誌としてではなく、幾分大衆的な雑誌として親しまれてきたが、岩波では大学での文学研究に逆風が吹いている状況を考慮したという。これには、昨年文科省が「教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院は組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に取り組んでほしい」と国立大学の文学部不要論を唱えたことから、文学への興味と関心が一層薄れると考えられたのではないか。更に販売部数が減少したことを大きな休刊の理由として挙げている。

学生時代に岩波の「世界」や、思想の科学研究会の「思想の科学」(1996年廃刊)をよく読んでいたが、流石の岩波も時代には勝てなくなったのだろうか。せめて岩波には「世界」だけでも守ってもらいたいものである。

2016年4月5日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com