オバマ大統領のノーベル平和賞受賞に対して、ノーベル賞委員会は、「国際的な外交と諸国民の協力を強めることに対して並外れた努力をした。特に『核なき世界』を目指すとする理念と取り組みを重視する」とその受賞理由を公表した。更に、多国間外交、気候変動問題で国際政治の新しい状況を生み出したと評価している。とりわけ2つの力強いスピーチが世界に希望を与えた。ひとつは、今年4月にプラハで発信した「核兵器を使った唯一の国として核軍縮へ行動する道義的責任がある」と語ったものであり、これこそが受賞を決定的にしたものだと思う。もうひとつは、6月にカイロで発言した「世界のイスラム教徒とアメリカとの間の尊厳に基づく新たな始まり」である。同時多発テロで幕を開けた21世紀が、再び憎しみと争いの時代に陥ろうとした矢先に登場した対話主義の大統領のメッセージである。これが、世界中から推薦された200以上の団体、個人を押しのけて、オバマ大統領にノーベル賞受賞を決定させた。
これに対してオバマ大統領は、「私の行為に対してではなく、すべての国の人々の希望を代表してアメリカの指導力に与えられたもの」「平和賞は目標達成への機運を高めるために贈られることもある。この賞を行動への呼びかけとして受け入れる」「核兵器がより多くの国々に拡散することを容認出来ない。大量破壊の脅威は、すべての人びとの問題」と語った。立場をわきまえた、それでいて謙虚なコメントである。今後オバマ大統領がどれほど実効的な政策を進めていくのか、目を逸らさずに注目していきたい。
過去の平和賞受賞者や、国際社会で脚光を浴びている政治家も大方期待感を滲ませている。 オバマ大統領は、ノーベル賞の副賞である賞金約1億2千万円を一括慈善団体に寄付するという。これからも生活には困ることはないだろうが、この思い切りの良さと潔さがオバマの人気の秘密になっているのかも知れない。
これからのオバマ大統領の行動に期待したいと思う。
さて、NHKの夜のドキュメント番組「八ツ場ダム 解決の道はどこに」を観ていて複雑な思いに駆られた。民主党政権となって、マニフェストにはっきり宣言していた「ダム建設中止」が、実際に前原誠司・新国土建設大臣に代わってはっきり打ち出された。地元の再三の「建設続行」要望に対して明確に「建設中止」を伝えた。八ツ場ダム建設中止問題は、新政権のダム建設見直しの考えの下に、これから建設か、中止か検討されていく、その試金石となるダム建設である。すでに工事を始めた大掛かりなダム建設を本当に中止することが出来るのか。昭和27年に計画が持ち上がり、反対派との間ですったもんだの末に移転代替地の提供により、半分以上の住民が村を離れたり、代替地へ移転した。その挙句の工事中止である。
村民もとても堪ったものではない。当初ダム建設に反対していた人たちの中でも、小の虫を殺して大の虫を生かす道を選び、建設に同意して、漸く移転した後の建設中止決定に、村民は翻弄され生活設計が立てられないと途方に暮れている。
住民にこれほど悩ましい問題が、政権が代わり民意がダムに反対しているからと言って、自分たちが犠牲にされるのは堪らないというのが村民の本音であり、これから一体どこに落としどころを見つけるかという難しい問題となった。
山口二郎・北大教授はマニフェストに盛られた政策を実行するのは、民主主義にもとるわけではないが、先に「建設中止」ありきの考えで、住民との話し合いもなしに一方的に中止行動を起こすのは民主主義ではないとコメントしていた。
全国には建設中のダムが数多くあるが、少なくとも八ツ場ダム騒動を反面教師として、国が周辺住民に充分気を配って話し合いを進めて欲しいものである。