893.2009年10月23日(金) 日本外交の先行きは大丈夫か。

 鳩山政権誕生以来大分気になっていたことがある。今バタバタしている国内政治はもちろんであるが、対米関係がギクシャクする気配のあった外交政策である。その遠因は、民主党が総選挙中からアジア外交重視と対米関係見直しをしきりに内外に訴えていたからだ。しかも、その対米関係では沖縄の普天間基地移設問題がすっきり解決しそうになく、加えて沖縄基地県外移設問題も解決への道はほど遠い感じである。

 来日中のゲーツ国防長官が、日本政府ののらりくらりした回答に相当いらだったらしく、日本の要求にはまず応じられないとの発言があった。そんな中で、アメリカ国内のマス・メディアはアメリカ政府高官が強い警告を発したことを大きく取り上げている。「拡がる日米同盟の亀裂」とか、「東アジアの安全保障の礎石の日米同盟を蝕む恐れがある」「中国の軍事力の増大や北朝鮮の核・ミサイルの脅威にどう対抗するのか」との批判が出ている。

 一方で、岡田外相が個人的な見解と断りながらも、普天間基地の沖縄県外移設は難しいと述べた。こんな国家にとって大事な事象を個人的な見解だけで口外すべきではないと思う。民主党マニフェストには県外移転、または移設と書いてあるではないか。それを内閣の統一意見ではなく個人としてそう考えていると断りながらも、無責任な発言をしているところから察するに、外相は反応を見るために観測気球を上げてみて、その様子によって有利な方向へこの問題を持っていこうとしていることが考えられる。他の大臣とは相談していないというなら、発言するなと言いたい。この人は割合まともな政治家だと思い、外務大臣には現在の民主党内では、岡田氏しかいないと大分期待していたのだが、こんな重要なことを軽率に発言したり、国会開会の際の天皇のお言葉に注文をつけたり、案外軽い発言をする人だということが分かった。

 しかし、これではこれからの言動が心配である。海千山千で練達の外国の外交官に対して岡田外交は果たして対抗していけるのだろうか。

 仮に米軍基地沖縄県外移設を行わないなら、アメリカとしてはホッとするだろうが、日本国内の収拾がつかない茶番劇を見て足元を見透かし、これからは思うような筋書きで米軍基地問題は進められるだろう。

 はったりも偶にはよいが、いとも気軽に個人的な見解とか、思いつきだけで重要発言をされたのでは国政がうまくいく筈がない。段々各大臣の言動が心配になってきた。

 今日の駒沢大の清田義昭講師の講義内容も考えさせられるテーマだった。ハンセン病患者の苦しみを取り扱い、南日本放送が制作したビデオ「人間として―ハンセン病患者人間としての闘い」と題した1時間半近い長編ドキュメンタリー番組を見せてくれた。10年以上に亘ってハンセン病患者の裁判を執拗に追った記録で、ストーリーが暗く見るのも辛い画面だったが、分かり易く立ち上がる患者が裁判で勝利を勝ち取り、それに対して控訴しようとする国に、控訴を諦めさせる闘争記録である。

 1907年に国の民族浄化という名の下に強制隔離によりハンセン病患者は施設に囲い込まれ、世間からは一切閉ざされた隔離生活を送るようになった。その経緯と立ち上がる患者をきめ細かく追った。ライ病予防法なる法律ができたのは、1953年だったが、実際にはそれ以前から患者は人間としての扱いではなかった。その法律が廃止になった1996年以降になって、患者が国へ賠償請求裁判を起こし、2001年に勝訴を勝ち取った。それに対して政府が控訴裁判を起こすとの空気があったが、原告団の国民への訴えかけやマス・メディアの啓蒙により、政府が控訴を取り下げたことが時系列的に取り扱われていた。

 番組では明るいシーンが少なく、見ていてあまり気持ちのよいものではないが、深く考えさせられた。それにしてもプロデューサーはよくここまで取材したものだと思う。毎回清田講師の授業では、見過ごしがちの重要な社会的事件を、改めて考える機会を与えてもらって背筋が伸びる感じになる。しかし、裏腹にどうも気持ちが落ち込んでしまうことが、こういう社会問題を見つめることから気持ちを遠ざけてしまうのではないかという気持ちもある。

2009年10月23日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com