898.2009年10月28日(水) 2つの海難事故の原因と対応

 昨晩関門海峡で海上自衛隊所属の護衛艦「くらま」と韓国のコンテナ船が正面衝突して、両船とも火災を引き起こした。鎮火するまでにかなり時間がかかったが、幸い死者がいなかったのは不幸中の幸いと言える。観光船で何度もあの海峡を渡った経験から言えば、7,000トン級の大きな船舶があのような狭い海峡ですれ違うこと自体に事故発生の危険性が潜んでいる。門司港と下関港間を往復する観光用のボートでもほんの5分ほどしかかからない。狭い箇所では僅か5~600mの海峡幅しかない。それほどの至近距離で、しかも潮の流れは速く、時間によっては流れが逆流する。もちろん遊泳は禁止されている。

 護衛艦とコンテナ船のどちらに衝突の責任があるのか、今のところまだはっきりしないが、これまでに得た情報から個人的に判断すれば、どうやら海上保安庁海上交通センターに大きな誤った情報提供があったようだ。

 この海域は狭過ぎるために普通追い越しは出来ない。両船ともルールに従い右側通行で航行していた。コンテナ船の前方に速度の遅い貨物船があったので、コンテナ船の要望に従い海上保安庁がコンテナ船に追い越しの許可を与えた。その際貨物船の右側ではなく左側から追い越しさせて、護衛艦の前に飛び出させ、護衛艦と衝突するという事故を引き起こした。

 海上保安庁海上交通センターは何ゆえに判断と指示を間違えたのか。貨物船が左側から追い越させて欲しいと言ったにせよ、時と場所、そしてルールを考えれば、異常な指示であることは明らかである。外国航路の元船長は、この海峡が世界で最も危険な箇所で、追い越しは考えられないと述べていた。

 空で言えば航空管制官とも言うべき海上保安庁海上交通センターなるものが、こんな杜撰で危険な船舶航行コントロールをやっているようでは、船舶も安心して航行出来ないだろう。犠牲者が出なかったせいか海上保安庁からは、一片のお詫びも反省の言葉もない。指示ではなく情報提供しただけで、最終判断は船長が行うべきものだと開き直っている。これは正に相手に責任をなすりつけるものだ。海上保安庁の対応とその後の言動は、無責任になりつつある現代社会の風潮を反映しているものだと言える。

 同じ海難事故でも、24日以来行方が分からなくなり遭難したと見られていた、長崎県鎮西町の漁船「第一幸福丸」が転覆した状態で発見された。八丈島近海で台風20号に遭遇し転覆、漂浪し、4日ぶりに見つかった中で乗組員3名が救助された。船長は亡くなり、他に4名の乗組員の行方は依然として分からない。絶望視されていた全漁船乗組員の内3名の生存が確認されたのは奇跡的であり、必死に生き抜こうとした乗組員の強い生への執着心があったからこそであろう。彼らの生存は、好い加減な海上保安庁の職員に対して、生命の尊さを無言の内に教えてくれる。それにしても、残りの4名の行方を思うと気が重くなる。「幸福」の船名の通り、残りの乗組員の生存を願って止まない。

2009年10月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com