今日は文化の日である。例年この日は秋の叙勲が行われるが、文化勲章のように科学文化の発展のために貢献された方々が、天皇から親授式で勲章を授けられるのは喜ばしいことだと思う。ところが、政治的色彩の強い勲章の中でも、最高の栄誉とされる旭日大勲章を受勲された11人の内訳は、実業界から3人、政治家が6人、裁判官が2人である。ここでも官尊民卑、政治家厚遇を地で行っている。確かに受勲される方々は国家・国民のために活躍されたことは間違いないだろう。しかし、聞いたところでは受勲者を選考するのは、内閣府で、ここへ猟官運動を行うのは政治家にとってはお手の物だそうだから、受勲者はある程度予想されるらしくその受勲も頷けるそうだ。それにしても、最高位の名誉をいただけるのは、官職に就いた者が圧倒的に有利ということは、やはり日本という国は役人天国だとの考えに一脈相通じるものがあると思う。
さて、文化の日は、私にとって71回目の誕生日でもある。年々月日の経つのが早く感じられるようになった。幸い若干血圧の高いことと、膝の炎症による投与薬の影響でCRP数値が基準数値から下がらないという2点を除けば、健康的にはさほど心配することはない。
しかし、湘南高同級生の間でもこのところ鬼籍に入る友人が増えてきた。当然のことだが、やはり健康管理が一番大切であると思う。
この年になって自分自身秘かに嬉しく思っているのは、好奇心と向上心が一向に衰えない点で、何でもかんでも採り入れようとする強い気持ちがまだ衰えないことだ。著述活動への意欲は相変わらずだし、その素となる旅への意欲も募りこそすれ衰えることはない。
今年は知研の仲間と初めて取り組んだ共著「知の現場」(東洋経済新報社刊)が年末に出版される。いま最後の追い込みに入っているが、仲間の文章を読んでも魅力的であり、全体として素晴らしい書になるものと期待出来る。序に販売成績も期待出来そうだとつい獲らぬ狸の皮算用をしてしまう。来年上梓を予定している新刊にもボチボチ取りかかり出した。
来週インドへ行くので、いくつかインド関係の書物を読んでいるが、以前から読みたいと思いながら読んでいなかった堀田善衛の「インドで考えたこと」が、中々インド社会の核心を突いていてその洞察力に納得させられる。欧米的発想から乖離した視点と論点には感心する。流石に直木賞作家だと思う。社会的なアングル、民族、文化、風習、経済、政治のそれぞれの見方が特異で面白い。こういう見方があるのかと感心しながら読んでいる。読者へ社会の本質的な見方とか、国家を分析する目、本の読み方を教えてくれる。久しぶりに目から鱗が落ちる書に巡りあった気持ちである。