スターリンの孫が祖父は国家のために奉仕したのに、大量虐殺者とか、国家の信頼を傷つけたと喧伝され、祖父の名誉が汚されたとして新聞社を相手に訴訟を起こしたそうだ。直ちに却下されたが、祖父が祖父なら、別の点で孫も孫である。ポーランド人将校がソ連軍に大量虐殺された「カティンの森」事件は、スターリンが殺害を命じたとされ、スターリンの残虐性を象徴する典型的な事件である。スターリンは今でもロシアでは偶像視されている傾向がある。ロシアでは過去の大粛清とか、独裁者というイメージよりも世界大戦に勝ち共産圏帝国を築き、ソ連を世界の大国へリードした力を評価している。ソ連がロシアとなり、民主主義国家として再建途上にあったが一旦躓くや、旧ソ連時代への郷愁から、ソ連とスターリンは復古調の波に乗り、現代ロシア人にじわじわとノスタルジアを掻き立てさせている。
だが、ソ連政府は「カティンの森」はナチスの犯行だったとデマを続けていたが、東西の壁崩壊後、誤りを認めてドイツに公式に謝罪した。それにも拘らず、本心では自分たちに責任はない。時代と環境のせいだとでも思っている節がある。
現在のロシアとロシア人には、自分たちは自分たちの利益のためにやっているのではないと言わんばかりの開き直りのパフォーマンスが見える。確かにロシア人には、そういう特異な一面がある。
映画「カティンの森」を撮ったポーランドのアンジェイ・ワイダ監督は、「ソ連は犯罪的な体制だった」と直截な表現をしている。映画は相当ソ連を批判的に描いているのだろう。日本では12月に上映されるが、ロシアではその予定はない。公開されたらぜひとも観てみたい。
さて、最近猟奇的な殺人事件が目立っている。結婚詐欺まがいの34歳の女性の周辺では、4人の男が不審な死に方をしている。同じように鳥取県では35歳の女につながる男が5人死んでいる。また、島根の女子大生のバラバラ死体が山中で発見された。極め付きは、2年前にイギリス人女性を殺害したまま逃走し、その間整形手術を受けて生き延びていた容疑者・市橋達也が、ついに今日逮捕された。タレント・酒井法子の麻薬事件以来の大騒ぎである。いずれも昔は考えられなかったような残酷な事件で、これもやはり時代性と言ったら良いのか。
とにかく怖い世の中になったものである。