971.2010年1月9日(土) 「遠野物語」の評価と功績

 今まであまり気がつかなかったが、今朝の日経「春秋」と朝日の「天声人語」の話題が同じなのには不思議な思いがした。新聞記事が重なったり、同じ話題を取り上げるということはニュースなどではよくあることだが、今日の小欄は時間的に制約のある社会ニュースや時事ニュースではなく、時間を超越した柳田国男の民話の世界にスポットを当てたものだったから余計に気になった。取り上げられた話題は、昨年10月に火事で消失した「座敷わらし」が現れると噂になっていた、岩手県二戸市金田一温泉郷の旅館「緑風荘」と、発刊100年の柳田国男著「遠野物語」に関することである。偶然にしては、あまりにもタイミングが良すぎる。少しはライターの間で話し合いがあったのだろうかと想像する。

 恥ずかしながら「遠野物語」は読んだことはないが、柳田国男が地方に口承で伝えられていた民話や物語を文章にして書き残し、後世に伝承したという点において高い評価を得ていることは言うまでもない。

 京都や江戸から遠い地方にも豊かな文化がいくつも息づいていた。伝承は各地にあるものを誰かが書き残さねば、いずれは口と耳の間にこぼれ、消えていく。その意味で柳田が書き残した功績は傑出したものであり、他に比類がない。あの三島由紀夫をして「遠野物語」を、「文学として読んできた」「これ以上はないほど簡潔に、真実の刃物が無造作に抜き身で置かれている」と絶賛せしめた。

 さて、新年になって多少株価が上がっているが、今後どうなるかはまったく見通しが立たない。そんな折りも折り、今週初め藤井裕久・財務大臣が辞任した。難産の末漸く来年度予算案を策定したばかりだったが、体調不良を理由に首相に辞意を申し出て受理された。財務相辞任の真相は、いろいろな憶測が流れているが、77歳という高齢を考えれば、一番の理由はやはり健康問題だと思う。

 昨年引退を決意していた藤井氏を、敢えて首相は比例代表区に立候補させ、当選となるや組閣において官僚のトップ省庁である財務省を任すことになった。そして直ぐに予算編成である。財源不足の中でマニフェストとの整合性が注目され、例年以上のプレッシャーがあったものと思う。

 そして後任の菅直人・副総理が早々と勇み足をやってしまった。円安を誘導するような発言をしてしまったのである。歴代の財務大臣が決して触れることのなかった聖域である。しかもかなり具体的に1$=90円台半ばが好ましいとまでしゃべった。途端に外為相場は円安へ振れ、担当大臣の恣意的な発言によって外為相場が簡単に動くということがはっきり証明された。

 それにしても、鳩山首相は政治資金問題でふらふらし、小沢一郎・民主党幹事長の土地購入代金の不透明さにも黒い霧が立ち込めている。菅大臣もその発言は軽率だった。すぐ陳謝したが、副総理がこんな軽い気持ちで大臣職を務めているとは、前途に普天間基地問題等の難問を抱えているだけに鳩山内閣もそう長くは持たないのではないかと心配である。

2010年1月9日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com