遂に日本航空が法的整理により、会社更生法の適用申請を行うことがはっきりした。巨星墜つとまでは言わないが、仄聞するニュースを見聞する都度、日本の経済力を世界に示威していた天下の日本航空が、こんな醜態を曝け出さなければならないのかと思うと少々寂しく残念な気がする。ここに至るまでには、それなりの原因があったわけで、当事者にとっては身を削られるような思いであろう。
しかし、現在の経営状態をこのまま先延ばしするともっと傷口を拡げる危険性があり、つい感傷的になるが、この倒産も止むを得ないのかも知れない。
それにしても、日本を代表する日本航空が倒産するとは想像すら出来なかった。私なりにある程度今日日航が行き詰まるに至った背景と原因を理解することは出来るが、それにしても惜しい。航空会社は外から見れば、華やかなイメージがあるが、経営的な実情はそれほど気楽なものではない。観光業界に奉仕していた立場から言えば、旅行商品を作るうえで重要なハード部分を担う航空会社が、低空飛行を続けると旅行のイメージも損なわれる。日航の頓挫が、観光業界全体の足を引っ張らないことを願いたい。
偶々昨日の日経新聞フロント・ページにあまりにもタイミングを見計らったようなマイナス・イメージの記事があった。
見出しに「店舗2割50店近ツー閉鎖へ」とある。近ツーとは、言わずと知れた旅行業界2位の大手エージェントである近畿日本ツーリスト㈱のことだ。同社は店頭販売の採算が悪化したので、店舗の統廃合によりコストの削減を図り、ネット事業を強化する方針だそうだ。業界首位のJTBも11年度末までには、2割の店舗を閉鎖する方針だという。
このニュースを察するに旅行会社も安定的な経営に固執するあまり、メーカーと同じ発想で無駄な部分をどんどんカットする方向に進んでいる。
しかし、旅行会社というのはメーカーの商品とは違って形のない商品を生産する会社である。目に見えない土地を説明し、感動、感激を顧客に味わってもらうために臨場感のある、情報提供と解説によって、顧客に夢を描いてもらい、訪れたことのない土地の文化に触れ、未知の人びとと交流して国際人となる機会を提供するものである。だからこそ、旅行を決める前にマン・ツー・マンでじっくり顧客と話をして、一緒に旅を作るぐらいの気持ちがないと決して良い旅行が出来るとは思えない。だから、店舗がなくなるということは、そういうコンサルタントとしての場所を失うことであり、エージェントもそうなら、旅行者にとっても気軽に相談出来ないということであり、お互いに不幸なことである。
ソフト部分をどんどんそぎ落として行った末に、旅行者に対して臨場感に溢れた知識と感動を与える人と場がなくなってしまうのではないか。はっきり言って、これでは旅行会社ではないと思うのだが・・・・・。