会社破綻の危機に瀕していた日本航空は、法的整理により昨日東京地裁に会社更生法適用の申請を行った。再来年度には黒字を計上するという再建計画の下に低空飛行で離陸した。果たして思惑通り再生が可能だろうかと考えると、絶対可能とは言い切れない点がある。これまでの国土交通省による採算を度外視した政治的要求と政治家の介入が、日航経営の足を引っ張った大きな原因と指摘されている。役所ももう2度とこういう馬鹿なことはしないだろう。そうなると再生のためには、日航自体が自ら抱える悪しき病的体質を健康体質に変えていかなければならない。
そのために日航がなすべきことは3点あると考えている。
その第1は、現在8つもある労働組合を1本化することである。組合同士で相手を非難しあう不毛のバトルを繰り返しているようでは再生なんか覚束ない。この点に再生委員会が条件をつけて踏み込まなかったのは不可解である。
第2に、現在所有している効率の悪い35機のジャンボ機を、中小機種に交代させるという。こんな経営上の問題点なんか当然分かりきっていたはずである。それに手をつけずに、これまで放置してきた経営陣の感度の鈍さは常識では図りきれない。ダメなものはダメと決断出来る経営判断が、果たして今後の経営陣に出来るだろうか。これもひとつの試金石だと思っている。
第3には、甘い体質だった「親方日の丸」意識を全社員の頭から完全に払拭出来るかどうかである。また、人員削減を実行するというが、残る社員に経営悪化の原因を作った「親方日の丸」的な甘い体質が相変わらず残っているなら、以前とほとんど変わらないのではないかと懸念される。
かつて世界中を飛び回っていたパンナムが1991年に倒産した。確か倒産したその年に、ステンレス業界団体の添乗員としてアメリカからブラジルへ周った時、アトランタでリオ行のフライトの再確認ができず、NYのパンナム本社、日本のパンナムへ度々電話したことがあった。しかし、それでも思うように予約をコンファーム出来ず、アトランタ空港へ早めにチェックインしたことを思い出す。その時アトランタ空港で驚いたのは、あったはずのパンナム専用のチェックイン・カウンターがなくなっていて、空港内を走りまわったことである。航空会社の倒産というのは、他には想像できないくらい大きな影響が出てくる。今日もテレビで専門家が、給油契約、機材の保守、着陸料現金払い、帰路の旅客の処遇等のさまざまな問題を孕んでいると解説していた。
再生を目指す日航にとっては、これからが正念場である。散々利用させてもらった立場から、ぜひ立ち直って欲しいと祈るような気持ちである。