かねてから懸念されていたわが国の借金財政の実態が経済開発協力機構(OECD)から発表された。国内総生産(GDP)に対する純債務比率が今年先進国の中で最悪の水準になると見通されている。総債務残高から資産を差し引いた純債務のGDP比率が、2010年に初めて大台の104.6%に乗ることになる。
そもそも日本の「総債務残高」のGDP比率が先進国で最悪になって借金財政が話題になったのは、20世紀末のことである。ただ、当時はイタリアの「純債務残高」のGDP比率が100%台だったのに対して、日本は50%台で他の先進諸国とほぼ同水準だった。しかし、欧米が同じ水準で推移する一方で、日本の比率は右肩上がりに拡大していった。その結果ついに日本の財政は世界でも稀なほどアンバランスな状態に追い込まれてしまった。
これでいよいよわが国財政の借金漬け体質が国際的にも明らかにされた。今のところ逼迫した財政問題を解決するメドは立っていない。当面民主党政権には消費税増税を真剣に論議する気はないようだ。かつて、橋本政権、小泉政権時代に行財政改革を志したが、政権交代によりその目標も頓挫してしまった。今日わが国経済は不況の真っ只中にあり、二番底景気も襲ってくるやも知れず、むしろ財政出動を期待される板ばさみの厳しい状況にある。
何と言っても最大のガンは、現政権の経済政策が将来展望を欠いて、常に目先の対策に追われていることである。ぐずぐずせずに政府、民主党は借金を減らすための基本政策を検討し、場合によっては消費税問題を真正面から捉えて真剣に議論して国民の理解を得ることが重要ではないかと思う。
さて、先日「知的生産の技術研究会」(知研)八木哲郎会長からコンサルタントで矢矧経営研究所を経営しておられる矢矧晴一郎氏と会食するので一緒にどうかとお誘いをいただいた。他に知研監事の杉沢達也さんも同席されるということだったので、喜んで新宿の会食に加わらせていただいた。
杉沢さんは高校の3年先輩でラグビー部の先輩、水野勇右さんと同級生でもあり、以前から親しく話をさせていただいたが、意外だったのは矢矧氏が慶応大経済学部の先輩だったことである。千種義人教授のゼミで学び、富士銀行に入行し支店勤務を経た後、岩佐凱実頭取の下でひとり特命的な業務をやっておられたという。独立されてから多忙な時期には、1年に120回ほど講演をされていた。著書も200冊以上書かれて、販売価格4万円の大著を2,000冊も販売したこともあると伺いびっくりである。現在80歳というが、とてもそうは見えない。しかも歯はすべて自分の歯で、入れ歯はなく、老眼鏡も必要としない。背筋はぴんと伸びて、威風堂々として恐らく180㎝は充分ある偉丈夫である。すべてにおいてつくづく凄い方だと思う。話の内容は一般的な世間話だったが、とにかく面白かった。偶々矢矧氏の講義を杉沢さんが聴講したことがあって、その時ひとりの若者が矢矧氏のお説に反論するような質問があったが、悠然と応答され、その内に会場内から講師に賛同する声が上がったというから、よほど説得力があったのだろう。
それにしても場を作ってくれた八木会長の幅広い人脈、向上心と好奇心には頭が下がる。喜寿にしてこのバイタリティには、一昨年やっと古希を迎えたばかりの私などはとても及びもつかない。