日米外交文書密約問題を調査していた有識者委員会の報告書を昨日岡田外相が発表したが、昨日の夕方からマス・メディアでは蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。
昨夕からのテレビ・ニュースはもちろん、今朝の朝日新聞の如きは、40頁の内全面広告が12頁で、残りの記事と広告28頁の中で実に8頁分も密約文書関係に費やしている。
今更言うまでもないが、日本政府が国民に対して嘘を言い続けていた不誠実さが30年経ってこの大騒ぎとなった。当然新聞の論調は日経紙も併せて政府に対して極めて批判的である。
国がまやかしとその場しのぎの逃げ口上で国民を騙していたことは歴然としている。今更何を言おうと元の鞘には収まらない。しかし、この嘘八百によって多くの人が迷惑を蒙り、その一方で嘘をついていながら我関せずと知らん振りは酷い。
日本政府が国民を騙した外交密約は4つある。
ひとつは有名な「非核3原則」であり、国内ではこれをよりどころに核廃絶を世界へ訴えてきた。それが嘘だと分かれば、世界へ発信していた日本の非核運動は何の説得力も持たなくなる。原子力空母により核が持ち込まれたとされる横須賀市では、前市長、現市長ともに憤慨している。長崎の被爆者代表も政府に裏切られたと悔しさが拭えない。
60年安保では、みんなとにかく当面の安保条約改定を阻止するとの強い意気込みで反対運動を続け、密約にまでは考えが及ばなかったが、その後何年か経過してどうも怪しいのではないかとの疑念を持った。
2つ目は、有事発生の場合米軍に日本国内基地の使用を認めるというもので、米ソ冷戦時代における朝鮮半島の戦闘行為を想定したケースである。
3つ目は、沖縄返還後に緊急事態発生の場合、アメリカが沖縄に核を持ち込むことに目をつぶるというものである。
4つ目は、沖縄返還時の原状回復補償額を日本が肩代わりすることである。
どうも不信感が消えないのは、肝心の公文書それ自体が紛失しているものがあることである。意図的に廃棄処分した可能性が強い。担当者がもうすでに退職しているからという理由だけで、この責任を追及しないのはおかしいと思う。
また、当事者がどの程度の情報を承知していたのか知らないが、首相在職時に白々と「承知していない」とか、「歴代の首相が密約はないと言っている以上ない」との空疎な言葉を、今以って言い、あまつさえ密約に拘わった人を堂々擁護するがごとき発言をする元首相のような人物をこのまま放っておいて良いものだろうか。
その最たる人物をひとり挙げれば、それは首相の座を放り出した安倍普三・元首相である。国家の大事に拘わった係累を弁護せんがために、安保条約改定を行った祖父の岸信介・元首相、沖縄返還交渉を成功させた叔父の佐藤栄作・元首相、核密約の東郷メモに記載された父の安倍晋太郎・元外相らに対して、国民への裏切り行為への反省や非難よりも、肉親を庇う言葉を悪びれることなく語り、自ら政権をいとも簡単に捨てた責任感の伴わない軽薄そのものの人物である。
こういう国民を騙しぬいたかつての国家のトップに言いたい放題言わせて良いものだろうか。
それに引き換え、密約を暴き自身職を失いながら、今も国家を相手に裁判で戦っている西山太吉元毎日新聞記者の執念には頭が下がる。
さて、今日3月10日は、65年前東京大空襲のあった日である。当時の遺族は今でも涙が止まらないという。その年私は国民学校へ入学した。
夕べから今朝にかけて強風が吹き冬型の荒れた天気で雪が積もった。この気象異変に、鎌倉八幡宮の樹齢1,000年とも言われる「大銀杏」が倒れた。鎌倉幕府3代将軍源実朝が、その陰に隠れていた甥の公暁に殺害されたという伝説的樹木である。地元の人も落胆している。
もう1件落胆させられたのは、佐渡で育てられていたトキ9羽が今朝死んでいた。どうもトキが飼育されていたケージに野生の動物が侵入して殺されたらしい。これも可哀相で切ない。