1032.2010年3月11日(木) ネルソン・マンデラとラグビー・ワールドカップ

 一昨日観た加藤周一先生のドキュメント映画「しかし それだけではない。」について、小中陽太郎さんとメールでやりとりして今日も加藤先生の晩年になってからのクリスチャン受洗について小中さんの考えをお知らせいただいた。一部には、加藤先生がキリスト教徒として洗礼を受けたのかどうかという点について、論議を呼んだようである。その辺りの議論は複雑なようだが、中々面白そうだ。無神論者だった加藤先生の受洗については、先生を知る教え子や周囲の間でも意外だったようだ。なぜ受洗されたのか。小中さんの考えるところでは、死への恐れと母親への追憶があると言っておられる。そして、実存主義も影響を与えているという。中々難しいものだ。

 新潟にいる二男から、「インビクタス(負けざる者たち)」という映画が南アフリカのネルソン・マンデラ大統領と1995年に南アで開催されたラグビー・ワールドカップが絡んだ物語に仕上げられて面白いので、ぜひ観てはどうかと勧めてくれた。早速今日は特別予定のない妻ともども、渋谷へ観賞に出かけた。

 かつて世界的に大きな波紋を投げたアパルトヘイトについて、クリント・イーストウッド監督がさりげなく取り上げた野心作で、アパルトヘイト廃止後のネルソン・マンデラ新大統領の苦悩と、南アの人種間の対立と憎しみ合いをラグビー・ワールドカップ開催に絡ませながら、実在のオールブラックスのスーパースター・ロムー選手らを登場させて臨場感を掻き立てている。1992年に南アフリカを訪れたが、当時はまだアパルトヘイトが厳然として存在して、黒人は隔離された居住地区で、白人からの差別に甘んじていると認識した。それが、この映画では、ネルソンが釈放された後総選挙で勝ち、初代大統領に就任した時、黒人の間に漂っている白人への対立と憎しみの感情をどうやって抑えさせ、国のために白人との融合を図っていくかということに腐心している様子をラグビーというスポーツを通じて映し出していた。

 今では表面的には差別はなくなったことになっている。しかし、表から一旦消えた差別は、逆に陰湿な形で顔を出すこともあると思う。そのあたりの感情を大統領の黒人と白人の護衛官たちが、ラグビー場における大統領の警備を通じて国の発展のために、黒人と白人がお互いの愛国心から少しずつ分かり合っていくという筋書きである。

 しかし、ワールドカップの大凡その結果は知っていたが、決勝戦の南ア・スプリングボックス対ニュージーランド・オールブラックス戦が、ペナルティ・ゴール合戦でノートライの引き分け延長の末、決勝点が南アのドロップ・ゴールで決まったとは迂闊にも知らなかった。

 ラグビーファンならずとも、楽しめる映画ではないかと思う。

2010年3月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com