1037.2010年3月16日(火) 録画で「ベン・ハー」を半世紀ぶりに観る。

 先日録画しておいたMGM映画「ベン・ハー」を半世紀ぶりに観た。1959年にアカデミー賞の11部門で賞を獲得し、大ヒットして日本映画史上初の天覧上映となった映画である。

 日本では翌1960年に東京・京橋の「テアトル東京」で一般公開され大きな話題となった。それまでのスクリーンと違って横長の画面で、大きなシネマスコープだと思いこんでいたが、後年になってパナビジョン社が開発して「ウルトラ・パナビジョン70」に発展した、当時の新型スクリーンだったようだ。チャールトン・ヘストン主演の4時間近い長編映画だった。あの当時の迫力とサスペンスは今観ても色褪せず面白い。大作と云われる所以だろう。

 映画を観たその年は60年安保の真っ盛りで、当時世俗的な情報には上の空だったが、この映画だけは観てみたいと思い、大学演劇部に入っていた同じクラスの肥後留太郎くんと「テアトル東京」へ観賞に行ったことを思い出す。

 この映画で関心を惹いた「戦車競争」が、奴隷を使役したガレー船、ライ病に冒された母と妹の悲劇的な情景とともに強く印象に残っている。その後度々ローマを訪れたが、戦車競走の撮影場所、パラティーノの丘の下にあるチルコ・マッシモを眺める度に「戦車競走」のシーンを断片的に思い出したものだ。

 50年経ってもそれらのシーンは強く心に残っており、改めてあの時の臨場感を思い出したが、いくつかの場面はどうしても思い出せなかった。特に情けなく感じたのは、ある若いタレントが1番印象に残っているシーンとして挙げた、キリストが十字架を背負ってゴルゴダの丘へ引き立てられて行く場面が、まったく記憶になかったことだ。些細なシーンならともかく映画の中でもひとつのクライマックス・シーンをすっかり忘れ去っていたことは、ちょっとショックだった。これが半世紀間の空白なのだろうか。

 こうして記憶が徐々にまだら模様となり、完全空白になって老いていくのだろうか。

 まあ、くよくよしても始まらない。記憶力は確かに少しずつ減退してはいるが、前向きな気持ちは弱まっているとは自分では思っていない。むしろ時間が足りないくらい忙しない毎日だ。

 さて、カタールのドーハで今日開幕されたワシントン条約締約国会議(175ヶ国加盟)では、モナコから提案されている、大西洋で絶滅が危惧されるクロマグロの捕獲と国際取引を禁止する附属書への掲載を議論することになる。EU諸国やアメリカがモナコの提案に同調する態度を示したことにより、反対の立場にいる日本は窮地に追い込まれている。世界のマグロ漁獲量のうち、その約8割を日本が消費している。差し当たり、大西洋の捕獲禁止が日本の消費市場に大きく影響することはなさそうだが、今後のクロマグロの市場を考えると深刻な問題である。

 ところで日本はマグロ船で太平洋海域を中心にマグロを捕獲し、大西洋にも船を出し、同時に多くのマグロを輸入している。日本人のマグロ好きがここへ来て自然資源減少の張本人扱いされ、諸外国の目は厳しい。ニュース番組で専門家も言っていたが、食文化の違いとか、クロマグロをパンダやシーラカンスと同じように絶滅危惧種扱いすることを非難することより、マグロ好きな人たちも美味しいからとか、安いからとかの理由だけでむしゃむしゃ食べるのではなく、日本の食文化ならお寿司の食べ方として、数少なくじっくり味わうということも考えた方がよいと言っていたが、なるほどと思った。そう言えば、贅沢になった近頃の子どもは、回転寿司屋でお腹一杯食べているが、あまりお勧めできないと話していた。確かに日本の食文化を主張するのも良いが、世界中から非難されるようなら、ここはひとつ立ち止まって考えてみることも必要ではないか。

2010年3月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com