幸いにしてしばらくの間国際的にセンセーショナルな事件が起きていないビルマだが、単に休火山状態にあるだけで、マグマはじわじわと燃え滾っている。今年中に行われる総選挙で、軍事政権は何とか民主勢力、国民民主同盟(NLD)を排除しようとしている。NLDと指導者アウン・サン・スー・チーさんが、1990年の選挙で圧倒的勝利を収めながら、軍政の強権的圧力によって政権の座に就くこともなく、スー・チーさんは自宅軟禁状態を強いられている。スー・チーさんは選挙権も被選挙権も付与されない。今月制定された政党登録法で、刑に服している者は政党の党員になれず、選挙権も被選挙権もないということが明らかになった。スー・チーさんはこれに該当することになるらしい。NLDが政党登録しようとしても、実際には自宅軟禁中のスー・チーさんや民主活動家らは総選挙に関われない。結局NLDは、公平さを欠くとして総選挙に参加しないことを決定した。軍政側にとっては思う壺である。
当然欧米諸国が最大の民主化勢力が参加しない総選挙の正当性を認める可能性は低いが、軍政はこのまま既定路線に従って総選挙を実施するらしい。
何度制裁を加えても懲りないビルマ軍政は、アメリカの追加制裁に対してもどこ吹く風という感じである。そこには、ビルマ国内の選挙制度に干渉することは内政干渉に当るとして、経済制裁に消極的な中ソのような国が後ろに控えているからである。
それにしても日本のビルマに対する影響力が、かつては考えられなかったほど低下したのは残念である。地下資源の豊富なビルマを見据えて、中国は積極的な支援を行い、ビルマを助けているため、相対的に日本の存在感は弱まっている。
中国のパフォーマンスには世界中が振り回されている印象である。
さて、近年殺人事件の時効を撤廃すべきか否かが大きな話題になり、その撤廃へ向けた動きも始まった。ところが、今朝0時を期して、15年前に発生した当時の国松孝次・警察庁長官銃撃事件が時効となった。警察幹部の無念やる方ない表情が印象的だった。
ところが、1日明けた今日になって、唐突に警視庁公安部長が「事件はオウム真理教のグループが教祖の意思の下、組織的・計画的に敢行したテロだった」と見解を発表した。時効後になって、逮捕も起訴出来なかった事件を、グループ名とは言え、匿名で8人を名指しで犯人扱いするのは極めて異例であり、こんな事例は初めてである。犯人を逮捕し、起訴できなかったことに対して、自戒の念があり納得できないことは理解出来るが、これは警察の言い訳、意趣返しであり、名誉毀損、人権侵害、さらに冤罪につながる危険性もある。どうも警視庁の意図がよく分からない。