鳩山内閣の機能不全、無能ぶりが日に日に際立ってきた。閣内不統一の印象を与えていた郵政民営化の見直しについて、改革案を打ち出し主導的にリードしてきた亀井静香・郵政改革金融担当大臣の提案に対して、昨日開かれた閣僚懇談会では鳩山首相に一任することにし、首相は亀井案を基本線に考えるという判断を下して取り敢えず一軒落着となった。
一連のどさくさ騒ぎを見ていると首相はもちろん、各大臣は郵政改革をどう考えているのか基本的なビジョンがまるで見えない。1件落着したのも、今日国会で党首討論の際閣内不統一の印象を与えては切り込まれるとの身の保全の懸念から、取り敢えず手打ちしたに過ぎない。
結局亀井大臣はいつも口にしている小泉郵政改革反対を声高に唱え、時計の針を元へ戻したい一念だけで暴れまわっている。自民党から除名され小泉憎しの持論と郵便票の取り込みを策して小泉郵政改革の見直しを何とか実行したいと考えている。
しかし、見直し案には多くの複雑な問題がある。金融筋からは特別に反対論が根強い。見直し案では、官から民へと動き出した小泉郵政改革が、明らかに民から官へ戻ることになる。28日の本欄にも書いたが、この見直し案は国民の承認を得ていない。それは、今日の党首討論でも山口那津男・公明党代表も、見直しなら民に問うべきではないかと指摘したところだ。
この問題を亀井私案通り推し進めるのか。鳩山首相のリーダーシップにまたひとつ首を傾げるような疑問と不信が加わった。
さて、文部科学省では、来年度から完全に「ゆとり教育」と決別することになった。また、大きな揺り戻しである。教科書の内容がボリューム的にぐんと増えて、頁数が大幅に増える。小学校の教科書なぞは、平均して25%も増えるというから、いくらゆとり教育からの脱皮とは言え、小学生の負担増加は並大抵ではない。これも文部官僚と政治に翻弄された結果である。
大体ゆとり教育に問題のあることは、その当時から誰しも分かっていたと思う。その中でも、円周率を「3.14」から「3」にすることや、小学5年生の数学から、台形の面積の計算方を削除したことで、その当時この点を耳にした時、本気かと思ったほどである。それが、今回元へ戻るらしい。
郵政民営化の見直しといい、ゆとり教育との決別といい、今の政治家は民のことを考えず、思いつきだけですぐに変心し、朝令暮改を繰り返す。これでは政治も政治家もとても信用できない。