日本でもこんな残虐で猟奇的な事件が起きるものか、戦慄とともに知った。今夜半神奈川県相模原市の県営障害者施設で元職員が忍び込み、入所者19人を殺害し、26人にけがを負わせた。戦後最悪の殺人事件である。元職員であるこの男は、勝手知ったる施設内で無抵抗の入所者を次から次へと残虐にもナイフで殺害していった。この施設には知的障害者ら約150人が長期入所していた。その後犯人は、地元警察署に自首して逮捕されたが、事件の動機は今一つ分かり難い。
銃乱射事件が頻発しているアメリカ国内でもこのニュースは即座に伝えられ、銃所有が認められていない日本で、ナイフによりこれだけ一度に大量の殺人事件が発生したことに大きな関心が寄せられている。
これだけ多くの犠牲者を生んだ最大の理由は、犠牲者のほとんどが介護「6」の重症患者で自分の力で立ち歩き出来ず、入浴・トイレも介護の手を必要とした人々だったことから暴力に対してまったく無抵抗・無防備だったことが大きい。更に犯人は内部事情に通じ、犠牲者の熟睡中に行動を起こしたことがこれだけの大事件に発展した。
正職員であった犯人は障害者を蔑視する対応から解雇されたことが事件の遠因だとしても、周辺情報から犯人の異常な行動も見えてくる。神奈川県警の取り調べに対して「障害者なんていなくなればいい」と凡そ施設の職員らしからぬ言葉を吐いたり、事件前に衆議院議長に殺人をほのめかすような手紙を届けようとしたり、危険な重度障害者の大量殺人を職員に示唆したり、それらが原因で強制的に一時入院させられたこともあった。その際大麻使用の陽性反応が見られたというから、この辺りに事件の伏線はあったように思う。犯人について、理解を示す人もいるが、裸のままオートバイに乗っていたり、奇妙な行動も多くの人に見られている。日頃の勤務、生活態度から周囲に手ぬかりはなかったのだろうか。
ある評論家が、重度の障害者はこの世から排除した方が家族は助かるとの発言に対して、障害者の家族の気持ちをまったく理解できない人間の言うことであると怒りを露わにしていた。
この事件はレア・ケースではあろうが、こんな残忍な事件が日常生活の間で平然と行われることは異常であるし、とても容認されるようなことではない。
銃社会のアメリカで凶悪な銃乱射事件をどうやったらなくすことができるかとの問いには、銃を絶対的に規制すれば事件はなくなると考えているが、その一方で銃所有が許されないわが国で、このような大量殺人事件はどうやったら防ぐことができるだろうか。答はすぐには出せない。