昨日衝撃的な事件が2件起きた。ひとつは、ポーランドのカチンスキ大統領夫妻、中央銀行総裁、軍幹部らポーランド要人が搭乗した同国特別機が、ロシア西部スモレンスク州カチン周辺で墜落炎上して搭乗員を含む96人全員が亡くなったニュースであり、もうひとつはタイ・バンコック市内で警察と前首相タクシン派デモ隊の衝突により、ロイター通信の日本人カメラマンが昨年のビルマ騒動に続き亡くなった、残念なニュースである。
前者は、今年70年目を迎えた「カチンの森事件」犠牲者約2万2千人のための追悼式典に出席するため現地へ向かう途上で事故に遭った。「カチンの森事件」については、つい2年ほど前まで寡聞にして知らなかった。1940年第2次世界大戦中に、ロシアがポーランド軍将兵を大量虐殺したとして、ロシアにとっては心の棘となっていた事件であり、つい最近まで頬被りをしていたが、近年その事実を率直に認め公表してポーランドとの和解を図っていた矢先の不慮の事故である。不思議なことに、すでに1度追悼式典を行い、プーチン首相が弔意を表したその式典にポーランドのトゥスク首相も出席している。大統領は首相とは肌が合わず、何らかの思惑があるようで最初の式典に出席せず、改めて2度目の式典に出席する予定だった。理由はともかく、大統領夫妻にとっては不運だったとしか言いようがない。
後者は、タイ・アピシッド政権と対立しているタクシン前首相派の反政府集会の取材中にデモに巻き込まれ命を落とした。死者は21名に上がる。4年前の軍部クーデター事件以来タイ政権は不安定な状態が続いている。これまでは、東南アジア諸国でも比較的政権が安定していると言われていたタイだが、最近政治の不安定と社会秩序は少々酷い。タイ在住の日本人も不安が消えないとこぼしていた。タイの政情が不安定になると、いずれその不安は近隣諸国に伝播して、アジア全域が不安定になる。すると経済活動に影響が出て日本にも余波が押し寄せてくる。何とかタイの政情が落ち着いてくれることを祈りたい。