どこまで条件を満たしているのか不明だが、こんなケースもあるのかと驚いたのは、まもなく支給される子ども手当てに対してなされた、ある在日韓国人の支給申請である。兵庫県尼崎市在住の韓国人男性が市役所にタイで養子縁組した子どもの手当てを申請した。この男性の妻はタイ人で、子どもは全員タイに住んでいる。在日外国人で海外に住む子どもに対する手当ては、認められていないわけではない。
男性は市役所に養子縁組を証明するタイ語で書かれた数十ページの書類を提示したという。厚労省の見解は、①年2回以上の親子の面会、②来日前に親と同居暦がある、③継続的に生活費などを送金、等々を満たしていることが条件である他に、このケースは制度の趣旨に合わないとして支給の対象外と尼崎市へ回答したという。
しかし、あまりにも異常なのは、この男性が養子縁組したのはタイ国内の修道院と孤児院の子どもで、何とその数が554人というのだから、首を傾げざるを得ない。仮に月額13,000円を全員に支給したとすれば、年間の受給額は8,600万円余りという。来年度からはその倍額になる。
真実は分らないが、これは誰が考えたっておかしい。子ども手当て受給狙いであることは想像がつく。しっかり調査をしたうえで、毅然と対応すべきである。
朝日夕刊掲載の「徳田秋声、軍国主義を暗に批判」という記事が目についた。戦時中軍部を正面から批判する勇気のある作家や評論家、学者はあまりいなかった。私の尊敬する河上肇博士でさえ、政府のあらゆる圧力に耐え切れず、信念を貫くために研究から身を退く「没落宣言」をしたくらいである。
記事によれば、小林修・実践女子短大教授は「時局に批判的な文学者が報国会に背を向けたのに対し、秋声は主要組織の中で、冷静に消極的批判を展開しようとしたことがうかがえる」と言っている。秋声の非戦的行動は寡聞にして知らなかったが、秋声の研究家・故野口富士男氏の評論に興味が湧いてきた。野口氏はどう分析しているのだろうか。