昨日行われた独立行政法人を対象とする事業仕分けで、「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」に1兆3千5百億円もの利益剰余金があることが明かされて問題となり、機構はその場で利益剰余金を国庫に返納するよう求められた。この独法のスタートは鉄道建設公団であり、それに旧国鉄清算事業団がくっついたもので、当初はそれほど豊かな財務状況ではなかったが、事業団の抱える国鉄保有地を高く売却したり、JR3社(東日本、東海、西日本)の株式売却益を管理したり、更に国からの補助金などの収入により、埋蔵金と称せられる資金が溜ったものである。国交省や機構は抵抗したようだったが、返納せよとのお沙汰で国へ返納することになった。
偶々今日麹町の海事会館で今秋発行する観光関係書の関係者5人が集まって編集会議を行った際、元運輸事務次官で、鉄道建設公団総裁でもあった松尾道彦・JN協会理事長から伺ったが、国鉄保有地を高く売って資金を増やすべく努力しても資金の使途については制約が多く、新幹線建設資金として使うことは認められなかったという。一連の事業仕分けで主催者側は、事前に調査はしただろうし、この席で独法の説明を受けたが、事業仕分けの現場でいきなり廃止とか、縮減とか、継続ということをいとも簡単に一刀両断に出来るものだろうか。拙速に走らなければ良いと思う。
それにしても1兆4千億円という大金が、1独法に保管されていたという事実を関係者はどう考えるのか。1兆4千億円という大金は、私が大学経済学部に入学した時、経済原論の安川正彬講師が最初に経済学を学ぶ学生なら覚えておくべき数字だと言われた金額である。それは1959年の国家の一般会計予算とまったく同じ金額なのである。国民の視点で言えば、どうも関係者は少し金銭感覚が鈍いのではないかと思わざるを得ない。
今日の夕刊紙で大きなニュースが3つある。ひとつは、赤坂プリンスホテルが来年3月に閉館されるという寂しい話である。都心の1等地にあり、建築家・丹下健三氏のその垢抜けたデザインのせいもあって一時は、華やかでランドマーク的な存在だった。何度か利用したことはあったが、ついぞ宿泊することはなかった。閉館の理由は、建物の老朽化に伴う営業不振だそうだ。立替られる建物はオフィスビルに変わる。
2つ目は、今月限りで閉場する歌舞伎座が千秋楽を迎えたことである。新しく建て直される新歌舞伎座は、オフィスとの複合ビルとなって3年後に生まれ変わる。大学生の頃、丁度父が明治乳業㈱宣伝部長の時、会社がPR企画で歌舞伎座とタイアップしていたので、運良く毎月のように歌舞伎を観に行く機会があり、多くの名優の芝居を観ることが出来たし、小学校の恩師・湯浅和先生とも一緒に観劇したことがある。残念ながらそれ以降社会人となってまったく歌舞伎座へ足を踏み入れたことはないが、再建されるとは言え、やはり寂しさが募ってくる。
もうひとつは、東京株式市場で日経平均株価が一時300円を超える終値287円安となり、昨年11月のドバイ・ショックの円高株安以来の大幅な下落となった。その理由は、金融不安で支援を要請したギリシャが格付け会社S&Pから格下げされたことにより、欧米の株式市場が下落した影響を受けたからと言われている。ちょっと明るい材料が見えてきた経済市況だが、まだとても安定した回復基調に入ったとは言えないようだ。