鳩山政権の新成長戦略の柱のひとつに、「技術・システムの海外展開」というのがある。その足がかりとして前原誠司・国交相がJR2社、車両会社トップらと訪米してアメリカ政府の高速鉄道構想にインフラ・セールスを開始した。すでに政府はインドに原発技術提供の、ベトナムには原発や高速鉄道セールスを開始している。
わが国の鉄道技術水準は世界でも最高レベルにあるが、それでもフランスとドイツが強敵と看られている。そこへ近年はスペイン、中国、韓国が参戦して、今後は激しい受注合戦が繰り返えされそうだ。日本は、過去において中国、韓国の新幹線導入競争で敗れ、独自の技術を海外で生かせなかったが、初めて台湾の新幹線導入で車両以外の鉄道敷設、駅施設工事を受注し、施行した。
日本では、政府が漸く本腰を入れて官民一体の大型海外プロジェクトへ協力体制を整えるようになったことは、資金面で優位に動けるようになったということだ。今後の成果を期待したいと思う。
ところが、月刊誌「選択」5月号によると、今回前原大臣の訪米に同行した葛西敬之・JR東海会長が大の中国嫌いで通っているそうである。そのこと自体個人的な感情で困ったことではあるが、どうしようもない。問題は葛西会長の中国嫌いが度を超えていることにあるようだ。中国政府の外交や経済政策に反論があるというなら、正々堂々議論することが出来るが、単に中国を蔑視するかのごとき中国嫌いでは、いずれ人種差別主義者と軽蔑され誰も相手にしなくなるのではないだろうか。
例えば、新幹線京都駅には、JR西日本とJR東海の管轄地域があるそうだが、JR東海管轄地域では中国語の表記がないそうだ。JR西日本地域ではちゃんと表記があるだけに余計不可思議な感じがする。これでは自社の顧客へ可能なサービスを怠っていると非難されても反論出来まい。この低次元の不親切な対応に葛西会長の意向が反映されているようだが、これでは個人的な遺恨、或いは私怨と言われても仕方がないのではないだろうか。
しかし、真相はどうあれ、公務に私情を交えては拙い。ましてや、社会的にも影響力のある大会社の会長職にある人だけに、その与える影響が大きい。モラル的にも好ましくない。こんな私情を業務に持ち込むようでは、経営者としての感覚を疑いたくなる。JR東海もこんなボスの意向を慮って営業分野に、歪んだ配慮をするようでは、社内の士気にも影響するのではないかと思う。
今後葛西会長がアメリカの鉄道建設工事入札の際、人種差別感や中国蔑視感が表れやしないかと懸念される。今どきこんな駄々っ子のような大物経営者がいるなんて、とても信じられない。