鳩山首相が首相就任後初めて沖縄を訪れた。訪問の目的ははっきりしている。すでにメディア等で報道されているように、地元に対して普天間基地移設政府案の説明と説得である。政府は普天間基地施設を2つに分散して移設しようというのである。その候補案のひとつは辺野古海上の桟橋案であり、もうひとつは徳之島への施設移設である。
まず、仲井真・沖縄県知事と稲嶺・名護市長に会って政府の素案を説明したが、案の定辺野古案は断固反対された。住民大会に出席した首相はここでは四面楚歌だった。地元は約束違反だと首相を強く責める。
この次は東京で徳之島の3人の町長との話し合いが持たれるが、町長らは早くから米軍基地の受け入れに強く反対している。とても首相の思い通りには進まない。
首相はこの問題を今月末までに解決すると言い続けているが、かねがね漏らしていた腹案があると言っていたのは、キャンプ・シュワーブの海上桟橋と徳之島に分ける分割案であると分った。昨年の総選挙で「海外移設、最低でも県外移設」は、いかなる成算があって首相の口をついて出たのかまったく分らない。この発言も首相周辺では、今頃になって選挙公約ではなく、首相が話の中で個人的に発言したものだと言い逃れを言っている。常識的にみてもこの発言は明らかに国民に公約として受け止められている。普天間基地移設は現時点では完全にデッドロックに乗り上げた。最早月末までに解決する糸口も可能性も絶望的となった。
厳しい言い方かも知れないが、鳩山首相は政治家、ましてや1国の総理大臣としての資質に欠けるようだ。政策の理念と政策の実行をどういう段取りで、誰と話し合ってどういう風に作業を進めるべきかということについてまったく分らないようだ。これでよくも政治家をやっていられると思う。首相の取り巻きも悪い。日米問題、並びに日本の防衛問題に関する重要アイテムを抱えて首相自らが沖縄へ乗り込もうとしているにも拘わらず、深く関わるべき官房長官、外務大臣、防衛大臣らが誰ひとりとして首相に同行し、首相ひとりの話し合いに任せずに、内閣の連帯責任者として立ち会おうとしないのか。無責任の謗りを免れまい。
それにしても、連立政権を組んでいる社民党や国民新党の対応、各閣僚らの行動や対応も首を傾げるところである。まるで反応なしの他人事扱いである。社民党の福島党首に至っては、今もって海外移設とわめきちらしている。これで鳩山首相は完全に袋小路に入り込んでしまった。この様子では、事態は解決のメドが立たず、こじれる一方である。
この難局に当たって、鳩山政権はこれからどうやって問題を打開し解決へ導こうとしていくのか。