NHK・BS放送が開始されてから今年でちょうど20年になる。これを記念していくつかの作品が再放送されている。その中でも過去に放映されたドキュメンタリー作品で、各種の賞を受賞した意欲的な作品をアーカイブスとして再放送している。
先日「民衆が語る中国激動の時代~文化大革命を乗り越えて~」が放映され録画しておいたが、今日やっと全部を観ることが出来た。何せ4回で4時間分の長編である。中国の文化大革命(1966~76)については、当然のことながら断片的には知っているが、自分の知識がかなり怪しいものだということも分った。
文革中に中国首相現職のまま亡くなった周恩来、文革とともに国家主席の座から追放され、不遇の死を遂げた劉少奇、さらに改革解放で今日の中国経済の礎を築いた鄧小平らの業績、そして国民が彼らに寄せていた気持ちを、多くの関係者へのインタビューを通じてこれほどリアルに表現しているのには感心した。劉少奇なぞは、反革命の張本人としてあまり良いイメージで伝えられていなかったが、このビデオでは、良識の人で国民のために奉仕して、挙句の果てに毛沢東に裏切られた悲運の人ということになっている。歴史の評価もそうだが、人物評価もどれだけ公平に出来るか、難しいものだと思う。
私の文革に対する理解も不充分ではあるが、文革にばかり気持ちが入り過ぎて、それ以前の1958年に始まった「大躍進政策」を見落としていた。実は毛沢東は中国全土の農村に「人民公社」制度を取り入れて失敗した「大躍進政策」を取り繕うため、4人組や紅衛兵を使って文化大革命を仕掛けたようだ。また中国共産党内での権力闘争、敢えて言えば劉少奇に集まりつつあった権力を、毛沢東は奪還しようとして反革命打倒と見せかけたクーデターを企てたとのストーリーは、迂闊ながらこれまで気がつかなかった。その点で言えば、大躍進政策も文化大革命も独裁者・毛沢東によって計画されたライバル追い落とし運動だったと言えるのではないか。何も考えず、ひたすら4人組の指令に従った当時の若者が気の毒である。今も文革に対する評価は定まらず、あまり踏み込んでは「偉大な指導者・毛沢東主席」の名誉を傷つける恐れがあり、中国政府としては腫れ物に触るように扱っている歴史事件である。
池上彰著「そうだったのか! 中国」(集英社刊)にもかなり詳しく書かれているので、もう少し腰を据えて読んでみたいと思っている。