小中陽太郎さんから記録映画鑑賞会があるとご案内をいただいていたので、期待して日本基督教団中目黒教会へ出かけた。映画は昨年すでに公開された「東洋宮武が覗いた時代」で、戦時中アメリカのマンザナ強制収容所に押し込められ自由を奪われた日系人の日常生活を写真家・宮武の目を通して赤裸々に描いたものである。中々の力作で随分考えさせられた。格別際立ったストーリー性があるわけではなく、宮武が撮った収容所内の写真を淡々と紹介しながら、収容所生活を送った日系人にインタビューする型式で、日系人世代間の考え方の違い、日系人2世が442部隊へ参加した経緯、アメリカ社会の日系人に対する偏見・印象等を紹介していた。その歴史的事実については、ある程度知ってはいたが、参加者からの話を通して新たに意外な事実も知らされた。
16歳で実際に収容所に強制収容され、戦後まで収容所生活を送った今年84歳になる武間喜美さん、ペルーで生まれ、アメリカへ連行されそのまま収容所生活を送った77歳の大阪・池田市の坪井寿美子さん、今上天皇のご学友として知られる元共同通信記者・橋本明氏ほかがショート・スピーチを行った。南米に暮らしていた日系人がアメリカ国内の強制収容所に抑留されていたとは初めて知った。
南米から連行された2,200名のうち、ペルーからは1,700名もの日系人が連れて来られたという。橋本氏は日系人二世が率先してアメリカ軍へ従軍した理由とか、アメリカ人の人種差別観、テロ直後のイスラム系住民に対するアメリカ人の嫌悪的感情は真珠湾攻撃直後の在米日系人に対する気持ちと同じだと話された。
それにもうひとつわれわれが誤解していることに気付かされた。これは収容所とは言え、内部で強制労働を科せられていたわけでなく3食付で働かなくてもよく、看守も厳しい人が少なかったようで割合自由が許されていたような印象だ。その点でナチスのホロコーストに象徴されるユダヤ人強制収容所とは大部違っていたようで、実際収容されていた日系人がその点について正直に告白している。
ロスアンゼルス在住のすずきじゅんいち(鈴木潤一)監督が、奥さんで元女優の榊原るみさんと参加され、制作の意図や息子アーチー宮武を始めとする取材者について説明された。驚いたのは鈴木さんが母校湘南高の後輩だったことで、その奇遇にはお互いにびっくり。
終了後、恵比寿ガーデンプレイスのオイスターバーで小宴となり、樋口裕一・多摩大教授、外務省密約裁判原告団のひとり・北岡和義さん、目黒区議・須藤甚一郎さんら普段から親しい人たちと、橋本明さん、鈴木さん夫妻ら15~6名くらいがワイワイ食事を楽しんだ。その後、中目黒へ戻り改めて一杯やってから帰宅した。中々有意義で楽しい1日だった。
小中さんは奥さんともども教会でお世話役をやって、最後まで皆さんに気を遣いながらあれこれ面倒をみておられた。いつものことながら頭が下がる思いである。