6日投開票されたイギリス議会の総選挙で労働党に代わって保守党が第1党になった。
しかし、定数議席(650)の過半数は獲得出来ず、保守党は第3党である自由民主党と連立政権へ向けて話し合いを行うことになった。2大政党制の見本と見られていたイギリスで、今回のように第1党が過半数を獲得出来ないという結果は予想外で異例と見られている。
日本人にとって理解され易いようでいて、案外分かりにくいイギリスの選挙制度は、今回のように総選挙で単独過半数を獲得した政党がない場合は、現職首相、つまり労働党政権のブラウン首相は自ら辞任するか、下院で不信任となるまで続投出来ることである。
選挙前まで労働党は定数(646)の過半数324議席を超える355議席を占めていたため、単独で政権を担うことができた。しかし、今回の総選挙では過半数326議席に対して、第1党の保守党はそれに満たない306議席で過半数に20議席及ばなかった。第2党に落ちた労働党の如きは、ほぼ100議席も失ってしまった。第3党の自民党が大きく進出したという結果ではない。保守党は労働党が失った97議席に対して108議席も増やしたことである。しかし、それでも過半数は取れなかった。政党同士の駆け引きにより党首同士の会談が頻繁に行われるだろう。
200年余りに亘ってイギリスでは2大政党政治が続けられてきた。ほとんど保守党と労働党が争ってきた主導権争いが、今回また労働党から保守党の手へ移るのかどうか。最近の政権交代では、大きな節目となった1979年のサッチャー保守党政権の誕生、そして1997年のブレア労働党政権がドラスチックな印象として強く残っている。前者は「新自由主義」路線を歩み、後者は「第3の道」路線を進んだ。
しばらくは新内閣誕生のための3党間の駆け引きが行われるだろう。
山口二郎・北大教授は「今回のイギリス総選挙で2大政党の議席が単独過半数に達しなかったことは、2大政党の間で政権をキャッチボールするシステムが変容したことを意味する」と論評し、日本が1990年代から政治改革や政党再編のモデルとしてきたイギリス・モデルが揺らいだともコメントしている。
昨年の総選挙で2大政党化しつつあった日本の政治も、民主党による政権交代が成った。しかも過半数に届かず連立政権を組んでいる状況は、何となく今度のイギリス新内閣を想像させて日英間の選挙結果に同じような現象が表れてきたという感じである。
これで2大政党論が高まりつつある日本の政党政治の将来性にも、疑問符が付けられたとみるべきだろうか。