しばらくメディアで大きなニュースとして取り扱われなかったビルマだが、民主化運動の先頭に立っていたアウン・サン・スー・チーさんが自身代表だった「国民民主連盟」(NLD)を解散させたことで、民主化運動も行き場を失ってしまった。これはもちろん彼女が意図していたわけではなく、また望んでいたことではなかった。巧妙な軍政の罠にはまってしまったのだ。軍政のしたたかな戦術的呼びかけに導かれ、辿り着いたところで受け入れられない条件を提示され、拒否した結果がこうなってしまった。今後NLDの政党活動や党員の政治活動は違法とみなされ、摘発の対象になるという。NLD関係者は解党には必ずしも賛成ではなかったが、スー・チーさんが下した決断に従った。他の民主化運動関係者にとっても大きな痛手である。
これからスー・チーさんは、軍事政権に対してどういう方策を取って支持者に約束した民主化運動を進めていくのだろうか。果たしてビルマに民主化は訪れるのか。国際世論はスー・チーさんたちの民主化運動を強くバックアップしているが、それでも国際社会で孤立している軍事政権が、結局そのまま体制を維持して国家を統治しているという理不尽はどうにかならないものだろうか。ここでも軍政をサポートしている中国の後ろ盾が民主化の妨げとなっている。
先日映画鑑賞会で会った映画監督の瀬川正仁さんから著作を送ってこられた。「ビルマとミャンマーのあいだ」という書名だ。副題に「微笑みの国と軍事政権」と書かれている。確かに瀬川さんがビルマを訪れたことは聞いていた。そのビルマで訪れた都市も半端ではない。われわれがビルマを度々訪れていた時代、1970年代には日本軍所縁のミートキーナやラショオは足を踏み入れることに許可が出なかった。旧日本軍航空隊の人たちからは、もう1度訪れてみたいとよく言われたものである。それにも拘わらず、瀬川さんは満遍なく各地を訪れている。許可が簡単にもらえるようになったのか、民族間の対立がなくなったのか、読むのが楽しみになってきた。お返しに、すぐ私のビルマ旅行企画体験を綴った「現代海外武者修行のすすめ」をお送りした。