上海万博が開催されて1ヶ月余りが経過した。開会直前の熱気を帯びた盛り上がりに比べ、その後報道はトーン・ダウンして詳しい情報はあまり伝えられず、何かトラブルでもあったのかと多少気にしていたところ、再び大きなニュースになった。日本館で予定していた「SMAP」の公演を、警備上の理由から中止することになり、万博事務局から正式に連絡があった。何でも韓国館で先日有名タレントのショーで大勢のファンが押しかけ行列が崩れて負傷者が出たことがその一因らしい。
入場者数も当初の期待に反して予想を大分下回っていた。大阪万博の総入場者数を上回る7千万人を目指していたが、危うくなってきたので、連日国を挙げて中国人団体を動員しているらしく、一時は1日20万人を割っていたのが、最近では50万人を超えているというから、その動員力には舌を巻く。
しかし、中国人がすぐ持ち出すメンツとかプライドのために、無理してまで国がかりで人集めをやるのはどうかと思う。実際その気になれば、人口過剰の中国だから大阪万博の入場者数を追い越すのは、そんなに難しいことではないと思う。
さて、いま国際的に外交・政治問題化しているのは、北朝鮮による韓国哨戒艦沈没事件だが、欧米を中心により一層世界の注目を集めているのは、先月末パレスチナ・ガザ地区への支援船をイスラエル軍が強引に拿捕し、9人の死者を出した事件である。ところが、昨日イスラエルは再びガザ支援船の行く手を阻み、今度は抵抗しなかった支援船をイスラエルの港へ曳航した。
イスラエルとパレスチナ自治政府の言い分は真っ向から対立している。イスラエルは、ガザ地区を支配するイスラム過激組織・ハマスへの武器密輸を防止する目的があると言い、一方の支援団体は、公海上で海賊行為により拘束されたとイスラエルを非難する。
そもそも事件の背景には双方の根深い不信感がある。2008年末のイスラエル空軍のガザ地区への大規模攻撃により、市街区は壊滅的な打撃を受け、復興にはまだ手がつけられていない。イスラエル政府はハマスの軍事拠点に使用されるとして、建築資材の搬入を認めていないからであり、ガザ地区住民は電気も充分供給されず、不自由な生活を強いられている。イスラエルのネタニヤフ首相は、ガザに人道上の危機は存在しないと言い、ガザ地区住民の苦境に同情する気はさらさらないようだ。
流石にこのイスラエルの乱暴な行為に対して、世界中から非難が浴びせられているが、イスラエル寄りのアメリカは、今回もイスラエルを非難することはせず、支援船に対してガザへ接岸せずにイスラエルの港に入るよう要請した。
だが、5月の支援船拿捕の際多くの犠牲者を出したトルコでは、エルドアン首相がイスラエルの蛮行に対して直ちに国家テロと断定し、両国間の外交関係を見直すことを示唆している。これまで中東諸国の中では唯一イスラエルと友好的だったトルコが関係見直しを言い出したことは、イスラエルの中東地域における孤立化が一層深まる懸念がある。
とにかくパレスチナ問題は複雑で難しい。こういう面倒な問題が仮に日本近海で発生したら、タフな外交交渉力とディベート力に欠けるわが国は、恐らくやられっ放しだろう。